3年前は生理的に無理で挫折した本。 とにかく語りの構成が天才すぎるな……モチーフの繰り返し、映画的なシーンの切り取り方、少し甘えたような文体はいつものように素晴らしく、それを貫く骨格として時間軸を遡っていく描き方が天才的。反対だったらこうはならない。 テーマそのものも重量感があるが、これが腑に落ちるにはまだ10年くらい必要そう。
元の読書記録を見る私の男の感想・レビュー
桜庭 一樹
文藝春秋
ISBN: 9784167784010
読者の感想・読書記録
ブックミーに投稿された公開の読書記録です。感想はそれぞれの読者の意見です。
友人に“よくある恋愛ではないから覚悟して読んで”と言われていたのに、ちゃちゃっと読み進める程度の心持ちで臨んだ私はド阿呆。 じめじめした雨の日や暗闇に包まれた夜中には読もうという気力が起きない。太陽が顔を出し、影を光が上回る時間帯・場所でないと、この本の重みには耐えられなかった。 まとわりつくような生々しさを持って、鋭利な何かを背に突き立てられるような恐ろしさを感じて、上下左右に大きく波打つ心を鎮めつつなんとか読み終わった。続けて読むことができなかった。この本を手に取ることさえ躊躇する時もあった。でもどこかに続きを読みたい自分もいて、そんな気持ちの上がり下がりに折り合いをつけるのはかなり時間がかかった。にも関わらず、登場人物の人物像は未だに掴みきれない。人とやりだけでなく場所、匂い、色、音など、何かしらが抜け落ちている感覚が拭えない。たった2人のだけの世界にいる淳悟と花のやり取りを追うと、羨ましくも安心している妙な違和感が付き纏ってくる。匂いや雰囲気に他の人とは異なる何かを感じて本能的に惹かれるという、理屈ではない点において理にかなっている。 自分は一生のうちに、憧れや理想、優越感、妥協、比較といった一切の要素を持たず、ただ感覚的に衝動的に生物的に愛しあう相手を見つけられるのだろうか。決してそれが幸せへ続く道とは限らなくとも、それでもなりふり構わずその人に寄り添う自分に出会うことがあるのだろうか。 家族の穴という共通点を有する二人の人生は、出会いから別れまでの15年だけで形を変えていった。別れから始まるこの物語の変化は、ある種必然であるかのように時間を遡っていく。 倫理的に許されない行為の積み重ねが、暗くて深い二人の欠陥を確かめ合っているようだった。生と死、善と悪、対極のようで表裏一体。淳悟と花を取り巻く人々と二人のコントラストがあまりにも鮮明で、余計に世界観が浮いている気がした。
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