まずこの作品で感じたのは、語彙が豊富だということ。センセイという設定上なのか作者の特性なのか分からないけれど、熟語や初耳ワード(自身の無知もある)が多かった印象だ。同じ意味を表す言葉が他にも多く存在するのに一般的でない用語を使っているのは、センセイと主人公の年齢差を浮き彫りにするためなのかもしれない。思えば語り口調や語尾にもどこか不思議な味わいが漂っていた気もする。 モテないわけではないツキコさんが先生という人間に惹かれる過程は本当にありきたりな日常の風景での中にあって、いつどこで大きく変わったということではない。二人の不器用で意地っ張りで踏み込み切れない関係性の上で成り立つものから、徐々に自分の気持ちに素直になっていく。ある種理性というか自分の信念が揺らいだ状態のような、そこで剥き出しにさらされた本心に従うかのような。先生と生徒という立場から離れたことで、そして出会うべくして出会ったかのような再会で、ゆっくりと暖め合うプラトニック的関係(実際は違うけど)が形成されていく様は心地よかった。 よくある恋愛ものとは毛色が異なるためか、焦ったさのようなものを感じることなく一緒に微睡むことができた。 時間経過としてはそんなにスローではないけれど展開が穏やかな作品に若干の苦手意識が芽生え始めていたけれど、これは読んで良かったと思える作品だった。
元の読書記録を見るセンセイの鞄の感想・レビュー
川上弘美
文藝春秋
ISBN: 9784167631031
読者の感想・読書記録
ブックミーに投稿された公開の読書記録です。感想はそれぞれの読者の意見です。
千早茜さんが好きだと公言していた川上弘美さんの作品をいつか読みたいと思っていたので、やっぱりこれとセンセイの鞄を。「気持ち悪い」という意見も分かるが、年齢を重ねると、人は「人」となり、人を好きになるというのに形は関係なくなったりもする。
元の読書記録を見るあなたの感想も、読書仲間へ
ブックミーで読んだ本を記録して、感想を共有できます。
ブックミーアプリをダウンロード