一度出会ったら、人は人をうしなわない。例えばあの人と一緒にいることができなくても、あの人がここにいたら想像することはできる。 心から束縛されている母。 母にとって美しい恋愛は娘にとっては違う。 あの人がいない場所になじむわけにはいかないの。と引越しを繰り返す。 骨ごと溶けるような恋の副作用。
元の読書記録を見る神様のボートの感想・レビュー
江國香織
新潮社
ISBN: 9784101339191
読者の感想・読書記録
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母と娘の2人の視点から交互に描かれる日常。街を“旅がらす”のように転々としつつ、どの場所にも“馴染まない”ことで男が帰ってきてくれると信じる母の姿は、夢見がちな少女的思考で止まっているだけだと思っていたが、読み進めると一筋縄ではいかないらしい。その程度があまりにも甚だしく、常軌を逸した言動が目につくようになるのだ。 幼いころは母の言葉を(全てではないにしろ)信じていた娘も年齢を重ねるにつれ、母の理想のなかで生きることに息苦しさを感じ始める。親離れすることは普通のことでありながら、ある種浮世離れした母の生き方や考えに疑問を抱き離れる決意を固める娘に、母を助ける意味合いも含まれているように思えた。 ラストシーンも本当に彼が迎えにきてくれたのか、幻想の拡張に過ぎなかったのか、曖昧だった。現実を生きつつも馴染まない、夢のような過去にすがる母親の様子を、年齢と土地の変化に合わせて微妙なズレを描く。日常に潜む狂気を、あからさまな出来事ではなく静かさや穏やかさの中に紛れさせる技術は確かだと思った。 でも個人的には…もう少し大きな揺れで心を掴まれる感覚が好きなので、まだ早かったのかなという印象。
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