ある日を境に風呂に入らなくなる夫とそれに困惑する妻。異様に水道水を嫌がる夫の生活は徐々に普通の生活から逸脱していく。 変わってしまった夫に寄り添う心と、どこか客観視する冷たい心に揺れる妻の心情がとても共感できた。いきることの苦しさや、心優しくあっても人と生きるうえで共有しきれない残酷さが描かれていた。そうであったとしても、健気にその通り生きていくしかないのだと思える、残酷ながらも平凡で美しいラストが印象的だった。金魚の台風ちゃんの話や妻と夫の会話もよかった。優しくも息苦しさを感じるみなさんにぜひよんでほしい。綺麗事じゃない。けれども優しく健気にいきたい。
元の読書記録を見る水たまりで息をするの感想・レビュー
高瀬 隼子
集英社
ISBN: 9784087446463
読者の感想・読書記録
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これまで普通に働いていた夫が、突然お風呂に入らなくなる話。 高瀬隼子さんは、不快感を描くのが抜群に上手い。夫の汚れていく過程がリアルで、嗅覚が過敏なわたしは文字を読むだけでもちょっと気分が悪くなるほど。 そんな夫を否定せず、寄り添う⾐津実は気長というか、こういう愛情もあるな‥と読み進めていくと、だんだんとそんなきれいでシンプルなものじゃないと気付かされる。 幼い頃に雨上がりの川で拾った魚「台風ちゃん」と彼女の関わり方から見えてくる、彼女の本質が怖い。そしてそれを踏まえた上でラストを読むと、本当に狂っているのはもしかして⾐津実なんじゃないかとすら思ってしまう。 ここからネタバレを含むけれど、⾐津実は愛情深いとか見守る懐の広さがあるとかじゃ全然なくて、ただの無関心なんじゃないだろうかと思ったりした。水道水が嫌だという風呂に入らない夫にミネラルウォーターを買ってきたりするのは、世間体だったり常識的に臭いのはあかんでしょ、という外に向けたパフォーマンスであって、彼女自身は一貫して無関心なようにも思える。汚い水の中に放っておかれても生きていた台風ちゃんと、夫の姿が重なる。そして、壊れていく夫を間近で見ながらも「うつ病なんかじゃないでしょ」と見て見ぬ振りをした結果は、台風ちゃんと同じように残酷なものだ。他の方のレビューを見ていると「台風ちゃんの呪い」とか「夫は台風ちゃんの生まれ変わり」とか面白いものもあるけど、わたしは単純に⾐津実の内面の残酷さを描いたお話だと受け取った。
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