Ayumi水たまりで息をする
水たまりで息をする

水たまりで息をする

高瀬 隼子

集英社

2024年05月21日頃

概要

第165回芥川賞候補作 ある日、夫が風呂に入らなくなったことに気づいた衣津実。夫は水が臭くて体につくと痒くなると言い、入浴を拒み続ける。彼女はペットボトルの水で体をすすぐように命じるが、そのうち夫は雨が降ると外に出て濡れて帰ってくるように。そんなとき、夫の体臭が職場で話題になっていると義母から聞かされ、「夫婦の問題」だと責められる。夫は退職し、これを機に二人は、夫がこのところ川を求めて足繁く通っていた彼女の郷里に移住する。川で水浴びをするのが夫の日課となった。豪雨の日、河川増水の警報を聞いた衣津実は、夫の姿を探すがーー。 【著者略歴】 高瀬隼子(たかせ・じゅんこ) 1988年愛媛県生まれ。東京都在住。立命館大学文学部卒業。2019年「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞。2020年に同作でデビュー。2022年『おいしいごはんが食べられますように』で第167回芥川賞、2024年『いい子のあくび』で第74回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

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読んだ

Ayumiさんの感想・評価

これまで普通に働いていた夫が、突然お風呂に入らなくなる話。 高瀬隼子さんは、不快感を描くのが抜群に上手い。夫の汚れていく過程がリアルで、嗅覚が過敏なわたしは文字を読むだけでもちょっと気分が悪くなるほど。 そんな夫を否定せず、寄り添う⾐津実は気長というか、こういう愛情もあるな‥と読み進めていくと、だんだんとそんなきれいでシンプルなものじゃないと気付かされる。 幼い頃に雨上がりの川で拾った魚「台風ちゃん」と彼女の関わり方から見えてくる、彼女の本質が怖い。そしてそれを踏まえた上でラストを読むと、本当に狂っているのはもしかして⾐津実なんじゃないかとすら思ってしまう。 ここからネタバレを含むけれど、⾐津実は愛情深いとか見守る懐の広さがあるとかじゃ全然なくて、ただの無関心なんじゃないだろうかと思ったりした。水道水が嫌だという風呂に入らない夫にミネラルウォーターを買ってきたりするのは、世間体だったり常識的に臭いのはあかんでしょ、という外に向けたパフォーマンスであって、彼女自身は一貫して無関心なようにも思える。汚い水の中に放っておかれても生きていた台風ちゃんと、夫の姿が重なる。そして、壊れていく夫を間近で見ながらも「うつ病なんかじゃないでしょ」と見て見ぬ振りをした結果は、台風ちゃんと同じように残酷なものだ。他の方のレビューを見ていると「台風ちゃんの呪い」とか「夫は台風ちゃんの生まれ変わり」とか面白いものもあるけど、わたしは単純に⾐津実の内面の残酷さを描いたお話だと受け取った。

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