しおさいほんのささやかなこと
ほんのささやかなこと

ほんのささやかなこと

クレア・キーガン/鴻巣 友季子

早川書房

2024年10月23日頃

概要

1985年、アイルランドの小さな町。寒さが厳しくなり石炭の販売に忙しいビル・ファーロングは、町が見て見ぬふりをしていた女子修道院の“秘密″を目撃しーー優しく静謐な文体で多くの読者に愛される現代アイルランド文学の旗手が贈る、史実に基づいた傑作中篇

ステータス

読んだ

メモ

ほかの子たちが嬉々として寄っていくものを前にわが子が怖じ気づくのを見ると心が痛み、いずれこの娘は世の中がもたらすものに立ち向かう勇気や力を持てるだろうかと案じずにはいられなかった。 「あんたの行きたいところ、どこへでも行けるだろうよ、お若いの」 「ひとのことより自分たちの持てるものを大事にし、世の中の流れを見極め、一歩一歩がんばって進んでいけば 家族はあの子たちをただ野放しにしておいて、いざ困ったことになったら見捨てた。 ひとというのは善くなれるんだ。町にもどる車中、…

ほかの子たちが嬉々として寄っていくものを前にわが子が怖じ気づくのを見ると心が痛み、いずれこの娘は世の中がもたらすものに立ち向かう勇気や力を持てるだろうかと案じずにはいられなかった。 「あんたの行きたいところ、どこへでも行けるだろうよ、お若いの」 「ひとのことより自分たちの持てるものを大事にし、世の中の流れを見極め、一歩一歩がんばって進んでいけば 家族はあの子たちをただ野放しにしておいて、いざ困ったことになったら見捨てた。 ひとというのは善くなれるんだ。町にもどる車中、ファーロングは心に銘じた。要は、持ちつ持たれつをどう実現し、どうバランスをとる方法を身につけるかって問題だ。 クリスマスというのは決まって人びとの運不運を浮き彫りにしてしまう。 最良の人たちと付き合いたいなら、いつでも丁寧に接すること。ウィルソン夫人はよくそう言っていた。 ウィルソンさんのこと、あの人の日々の思いやり、折々に自分を正し励ましてくれたこと、彼女が言ったりしたりしたささやかなこと、決して口にも行動にも出そうとしなかった小さなこと、知っていたに違いないことを思った。そうしたことが積み重なってひとつの人生が出来あがったのだ。

しおさいさんの感想・評価

ファーロングがどんな選択をするのか、中盤以降心をざわざわさせながら読んだ。自分の人生の成り立ち、ウィリアム夫人やネッドから贈られたものを回顧し、その尊さに気づく。だからこそ、選択の結果が良いことになるよう願わざるを得ない。 贈られた小説を読み切り、誇らしげな気持ちになった少年時代の場面。ふとしたことから、我が子の将来を案じる親としての場面が印象に残った。

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