BUTTER
柚木 麻子
新潮社
2020年01月29日頃
概要
男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子。若くも美しくもない彼女がなぜ──。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳にあることを命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。各紙誌絶賛の社会派長編。
ステータス
読んだ
ひよさんの感想・評価
犯人が「女性ゆえ」の、事件に関する偏った「語り」方を、フェミニズム的な視点からシスターフッド的に解体する事による可能性と限界を感じた一冊だった。勿論、これは作者による「戦略的な語りの限界性」なのだと思うけど、それに対して無自覚に読むと、免罪的な側面に引き摺り込まれてしまうのではないかな、という危うさも感じた。 勿論、罪の内容の重さより「女性として」のルックスでマスコミや大衆に色眼鏡で見られて面白おかしく一義的に評価されていた木嶋早苗の事件をフェミニズム的に解体して、新たな記述と解釈のの可能性に開こうとしたのは大きいと思う。「醜い」女性としてのルックスが露呈させるミソジニー由来の、一義的な事件の語りは、被害者の実態は勿論、犯罪者としての木嶋早苗の残忍さや罪の重さを相対的に矮小化してしまう恐れがある- 例えば、「こんなに醜い」のに、男を魅了し尽くしたのはなぜか?といった報道の方向性に集約されてしまうように。 ただ、その語り口の解体があまりにも「フェミニズムにおけるシスターフッド的な連帯」に寄り過ぎて、「女性だから」容姿でアンバランスに語られてた木嶋早苗の事件を再び「女性だから」という理由でシスターフッドの問題に集約して矮小化してしまう危険性があるというか、、。 木嶋早苗に関するミソジニーな一義化(「醜い」女性としての怪物性)で歪められた事件の語りが、「女性だから」という連帯の物語に回収することで、再びジェンダーの問題として置き換えた語りで矮小化される危うさが喉に引っかかった。木嶋早苗個人の持つ、加害性や個人的な倫理的選択、暴力性といった問題すら、「女性が抑圧されてきた構造」の説明原理で片付けられてしまう恐ろしさみたいなものを肌で感じた。 勿論、この「一元化される歪み」に伴う危うさは、「女性だから」という理由でアンバランスな関心を引き寄せる事件の語り方を「女性ならでは」の視点で解体するにあたって必然として伴うもので、作者も織り込み済みなのかもしれない。この小説は、「木嶋早苗という1人の人間に関する、ミソジニー的な語られ方の歪み」に焦点を絞ったものだから。新たな語り方のための戦略的な取捨選択がもたらす矮小化の罠についても、「失敗」というよりも「新たな語りに出来事を開く事に伴う必然的なリスク」として受け止める必要がある。
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