月と六ペンス
ウィリアム・サマセット・モーム/土屋政雄
光文社
2008年06月
概要
新進作家の「私」は、知り合いのストリックランド夫人が催した晩餐会で株式仲買人をしている彼女の夫を紹介される。特別な印象のない人物だったが、ある日突然、女とパリへ出奔したという噂を聞く。夫人の依頼により、海を渡って彼を見つけ出しはしたのだが…。
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たけさんの感想・評価
とある堅実な男が疾走した。男はパリにいるという。夫人の依頼で現地へと向かった「私」に、男はこう告げた。 「絵を描きたいんだ」「何が何でも描かねばならん」「自分ではどうしようもないんだ」 皮肉屋で傲慢、そして天邪鬼の男は、ただ一点だけを見つめて描き続ける。人と社会の営みから外れ、一時の安息もなく、むしろ不幸を振りまくようにして。 男がたどり着く場所に、芸術でしか己を満たすことのできない男に、安息はあるのか。 己の内側を己の選んだ手段で形作ること。その道の果にしか存在しない景色。「人はなりたいものになるのでなく、ならざるをえないものになる」、すべての社会がそうであれば良いのにと思う。
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