たけ密やかな結晶 新装版
密やかな結晶 新装版

密やかな結晶 新装版

小川 洋子

講談社

2020年12月15日

概要

その島では多くのものが徐々に消滅していき、一緒に人々の心も衰弱していった。 鳥、香水、ラムネ、左足。記憶狩りによって、静かに消滅が進んでいく島で、わたしは小説家として言葉を紡いでいた。少しずつ空洞が増え、心が薄くなっていくことを意識しながらも、消滅を阻止する方法もなく、新しい日常に慣れていく日々。しかしある日、「小説」までもが消滅してしまった。 有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。

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読んだ

たけさんの感想・評価

その島では、一つ一つ記憶が消滅していく。 例えば、切手。リボン。鈴。エメラルド。 記憶を失うことのない彫刻家の母に、半地下の作業室でひっそりと記憶の話を聞く主人公。やがて母は秘密警察に連行され、主人公はひとりの女性として生きてゆく。 主人公もまた一つ、また一つと記憶を失っていくのだった……。 『それは夜の底にこのひとときを封印する、鍵音のように響いた。』 いとおしむ、という単語は、その存在を「いと惜しむ」と同義だと教わったことがある。 惜しむことすらできず、すっぱりと失われていく記憶たち。そこに残る喪失への悲哀を、ありとあらゆる言葉を使って一冊の本に閉じ込めてあった。 からっぽの宝箱に残った思い出の一つ一つを思い起こすような作品だと思った。

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