きっと好きなものも思い出も手放してしまったら自分を消失する
元の読書記録を見る密やかな結晶 新装版の感想・レビュー
小川 洋子
講談社
ISBN: 9784065214640
読者の感想・読書記録
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その島では、一つ一つ記憶が消滅していく。 例えば、切手。リボン。鈴。エメラルド。 記憶を失うことのない彫刻家の母に、半地下の作業室でひっそりと記憶の話を聞く主人公。やがて母は秘密警察に連行され、主人公はひとりの女性として生きてゆく。 主人公もまた一つ、また一つと記憶を失っていくのだった……。 『それは夜の底にこのひとときを封印する、鍵音のように響いた。』 いとおしむ、という単語は、その存在を「いと惜しむ」と同義だと教わったことがある。 惜しむことすらできず、すっぱりと失われていく記憶たち。そこに残る喪失への悲哀を、ありとあらゆる言葉を使って一冊の本に閉じ込めてあった。 からっぽの宝箱に残った思い出の一つ一つを思い起こすような作品だと思った。
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