アフター・ユー
一穂 ミチ
文藝春秋
2025年11月21日頃
概要
●一穂ミチ3年ぶりとなる待望の長編 『光のとこにいてね』(島清恋愛文学賞受賞)、 『ツミデミック』(直木賞受賞)、 『恋とか愛とかやさしさなら』(本屋大賞ノミネート)と、 次々と話題作を発表する一穂ミチさん。 3年ぶりの長編となる今作は、 一穂さんが「いつか書きたかった」という、 「不在」と「喪失」の物語となりました。 互いに秘密を抱えながら暮らす 男女に訪れた突然の別れーー。 喪失を通して愛を問う、大人の恋愛小説です。 〔あらすじ〕 タクシー運転手の青吾が仕事を終えて家に帰ると、帰宅しているはずの恋人・多実がいない。 翌日以降も戻る気配がなく焦りを募らせる青吾のもとに、 <多実が見知らぬ男性と五島列島の遠鹿島で海難事故に遭い、 行方不明になった>というしらせが届く。 謎の多い事故の真実を求めて、 男の妻だという沙都子と遠鹿島へ向かう青吾。 多実の人生のかけらを拾い集める旅は、 青吾自身の過去をも照らしながら、 思いも寄らぬ場所へとふたりを導くーー。
ステータス
読んだ
Ayumiさんの感想・評価
ミステリ要素のある小説はさほど好まないけど、一穂ミチさんの筆力には信頼を置いているので、新刊が出たと聞いて迷わず購入。 当たり前に旅行から戻ってくると信じて疑わなかった恋人が帰ってこない。しかもその恋人多実は、五島列島の遠鹿島で男性と海難事故に遭い、行方不明になったという-というストーリー。ひとり喪失感に見舞われる青吾のもとに、多実と一緒に行方不明になった男性波留彦の妻が訪ねてくるところからストーリーが展開していく。 二人が訪れる遠鹿島の閉鎖的な雰囲気。誰もが彼もを知っていて、プライバシーなんてない田舎独特の空気。そこで少しずつ明らかになる二人の過去。 確かにミステリ要素は強めで、最初1/3くらいを読んだ時点では「やっぱりミステリ向いてないのかな‥」なんて思いながら歩み遅く読んでいたのだけど、島であることが起こったところから、わたしの心は持ってかれた。これを「ファンタジー要素」と形容する人もいるけど、わたしはファンタジーなんて大袈裟なものじゃなく、切なくて大切な人を亡くした人はきっと一度は願うだろうことだと思った。しかも毎回同じ展開な訳ではなくて、少しずつ真実に近づくヒントになるという展開も上手い。 ミステリが苦手な理由のひとつに、文章の美しさよりも謎解きに重きが置かれ、エンタメ要素が強く出てくるからと言うのがあるが、一穂ミチさんの文章は軽いのに美しくて、描写が細やかで、飽きることがない。含みを持たせ、余白を残しながらも、物語はサクサクと動いていく感じ。会話の中にちょっと面白さが滲む部分も、「ほらどうだ笑えるだろう」みたいな押し付けがましさがなく、笑かしてやろうという作者の意図ではなく、登場人物たちが少しずつ心を開いている描写の一つにすぎない、そのさりげなさも好きだった。 終盤30ページほどは切なくて、最後読み終わってもじーんと切なさが滲む小説だった。一穂ミチさんは短編が好きだけど、長編なら「光のとこにいてね」よりも好きだった。
この本を読んだ人の感想
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