犬のかたちをしているもの
高瀬 隼子
集英社
2022年08月19日
概要
第43回すばる文学賞受賞作 昔飼っていた犬を愛していた。 どうしたら愛を証明できるんだろう。犬を愛していると確信する、あの強さでーー。 間橋薫、30歳。恋人の田中郁也と半同棲のような生活を送っていた。21歳の時に卵巣の手術をして以来、男性とは付き合ってしばらくたつと性交渉を拒むようになった。郁也と付き合い始めた時も、そのうちセックスしなくなると宣言した薫だが「好きだから大丈夫」だと彼は言った。普段と変らない日々を過ごしていたある日、郁也に呼び出されコーヒーショップに赴くと、彼の隣にはミナシロと名乗る見知らぬ女性が座っていた。大学時代の同級生で、郁也がお金を払ってセックスした相手だという。そんなミナシロが妊娠してしまい、彼女曰く、子供を堕すのは怖いけど子供は欲しくないと薫に説明した。そして「間橋さんが育ててくれませんか、田中くんと一緒に。つまり子ども、もらってくれませんか?」と唐突な提案をされる。自ら子供を産みたいと思ったこともなく、可愛いと思ったこともない薫だったが、郁也のことはたぶん愛している。セックスもしないし出来にくい身体である薫は、考えぬいたうえ、産まれてくる子供の幸せではなく、故郷の家族を喜ばせるためにもらおうかと思案するのだったが……。 快楽のためのセックス、生殖のためのセックス。子供を産むということ、子供を持つということ。 1人の女性の醸成してきた「問い」の行方を描く。 【著者略歴】 高瀬隼子(たかせ・じゅんこ) 1988年愛媛県生まれ。東京都在住。立命館大学文学部卒業。「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞
ステータス
読んだ
Ayumiさんの感想・評価
高瀬隼子さんの本を読むのは2冊目。こちらがデビュー作ということだけど、デビュー当時から独特の小説全体に漂うモヤモヤとした雰囲気は健在だったのですね。 すっきりとした文章の行間に彼女の持ち味でもある「行き場のないフラストレーション」や「常識から逸脱した考えを持つ難しさ」みたいなものが染み出してきて、読み手を得体の知れない不安感で包む。 夫の浮気相手に「子供もらってください」と言われた主人公の薫が、そんな突飛な願い(そして浮気した夫)にどう向き合うか、というお話。子どもを特別欲しいと思わないという自分の気持ちと、そんなこと言わなかったのに密かに欲しいと思っていた夫の願いを尊重したいという気持ちの間で揺れる。 装飾の少ない文章なのに、説明的にならず、なんだかその場面を目の前で見ているような気にさせてくれる描写の巧さもさすがです。
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