月の扉
石持浅海
光文社
2006年04月
概要
沖縄・那覇空港で、乗客240名を乗せた旅客機がハイジャックされた。犯行グループ3人の要求は、那覇警察署に留置されている彼らの「師匠」を空港まで「連れてくること」。ところが、機内のトイレで乗客の一人が死体となって発見され、事態は一変ー。極限の閉鎖状況で、スリリングな犯人探しが始まる。各種ランキングで上位を占めた超話題作が、ついに文庫化。
ステータス
読んだ
メモ
◎泣きたいような、怒ったような、焦れているような、それでいて誇らしげな表情ー。 ◎心理的陥穽(おとしあな、わな) ◎今まで思い出そうとして思い出せなかった情景が、コトリと音を立てて記憶の倉庫から転がり出てきた ◎それぞれの意見に、それぞれの説得力を感じ、そして同じ量の違和感を感じる ◎聡美たちが違法な手段で師匠救出を強行しようとしたことに対する怒りと苛立ち、一方自分は、努力で身につけた実力で県警に圧力をかけるという、正攻法で師匠を救出しようとしたという誇り、それがうまくいかな…
◎泣きたいような、怒ったような、焦れているような、それでいて誇らしげな表情ー。 ◎心理的陥穽(おとしあな、わな) ◎今まで思い出そうとして思い出せなかった情景が、コトリと音を立てて記憶の倉庫から転がり出てきた ◎それぞれの意見に、それぞれの説得力を感じ、そして同じ量の違和感を感じる ◎聡美たちが違法な手段で師匠救出を強行しようとしたことに対する怒りと苛立ち、一方自分は、努力で身につけた実力で県警に圧力をかけるという、正攻法で師匠を救出しようとしたという誇り、それがうまくいかなかった悲しみが凝縮された表情だったのだ ◎憤懣やるかたない(たとえようもなく立腹してどうしようもないさま・どうあっても腹立たしさが晴れない気持ち) ◎麻里は確かに強くなった。でも、強くなるというのはこういうことだったのか? ◎あれは、目の前に和子を破壊した女がいたのに、それに気づかないわたしに対する苛立ちと、その女に対して手を汚さずに制裁を加えられる自分を誇ったものだったのね。 ◎麻里には、もうキャンプは必要ない。生きながらにして再生の世界へ行く必要も。聡美は麻里を失ったのだ。永遠に。 ◎月が輝いている。 ◎ブリコラージュ(寄せ集めて自分で作る・器用仕事・ありあわせの材料で組み合わせることで一つの作品を作り上げる技能) ◎ジャーゴン(話していることが支離滅裂で、意味不明な状態) ◎キメラ性(同一の個体内に異なる遺伝情報を持つ細胞が入り混じっている状態) ◎大団円(小説、芝居、事件がめでたくおさまる最後の局面) ◎充溢(満ちあふれること)
ほわほわさんの感想・評価
読書歴の浅い自身にとって、ミステリー小説はかなりハードルが高く感じられていた。本のページをめくってすぐに飛行機の座席表と登場人物名が記載されているのを見て、「あぁこれは謎解きタイプの書籍なのか」と若干尻込みした。しかしさすが友人イチオシ石持浅海さん、一元さんお断りの姿勢ではなく100人中100人が理解できる造りになっていた。一時的に行間で読ませるとしても、必ずそのクエスチョンにアンサーを与えてくれる。 この要因としては、作者が展開を考えてから登場させる人物像を作り上げる手順を踏んでいるためと考えられる。だから人ありきの曲解らしきものは見当たらなかったし、ミステリーという枠に囚われすぎない人間関係や幻想も織り込ませていて飽きがこなかった。 また、「本だからこそできること」を最大限に発揮した構成だったと思う。ドラマや映画だも、キーとなる場面や伏線回収の際、やたらめったら効果音や表情の変化で匂わせてくるのが気になってしまう。 しかし本は文字が唯一のツールであるため、他のメディアで感じる不快なほどの違和を回避できる。そこを活かして、敢えて言葉として「コトっ」「なにかが引っかかった」とつまづきを作っても、意識の許容範囲内で留めていられた。 さらに回収も大小様々な事象がつながっていて、表情の誤認や冒頭からの裏切りなど小さな誤解の粒が大きな事態急変を引き起こすトリガーになった。小説的な現実から大きく飛躍する夢物語を側面を持ちつつ、どこか理解できる感覚。 タイトルの「月の扉」は比喩ではなく言葉通りの意味を含んでいた。「月が輝いていた」という一文の広義性には思わずうなづいてしまう自分がいた。私は、新たなる「本の扉」を開いたのかも。なんつって。
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