ありふれた怪物がひたすら自省する話。 他人のことを考えず、ひたすら自分の考えを押し付ける自己中自己満モンスターのジョーンが、人から切り離された砂漠の中で自分のことを考え続け、自分の正体に気づきかけた。気づきかけたんだ。だがこの女はその気づきかけた真実を、見なかったことにした。 なんてこった。俺はスカッとジャパンのような爽快感を期待していたんだ。ジョーンが今までの行いの報いを受けて、徹底的に苦しい目に遭ってほしいと思っていた。だがこれは勧善懲悪ものではない。あくまでこれは「ジョーンが勝手に思ったこと」を書いただけなんだ。 私は完璧な主婦、優しい夫と愛する子どもたち。皆幸せにしてきた。私も幸せ。 ジョーンは今までずっとそう思ってきた。それが間違いだったと気づきかけたが、それすらも「ジョーンが勝手に思ったこと」にすぎない。幸せと思うのも自分、それがすべて間違いだと思うのも自分。だったらジョーンは自分に都合がいい前者を盲目的に信じることにした。一人称小説の妙だよねえ。この話はずっと、ジョーンの偏った見方で進む。哀れで愚かで平凡な女。ずっと弱い、ずっと他者と向き合うことから逃げてきた。 ジョーンって本当に愚かで……ずっと気づかないんだ。自分の間違いを察する機会は何度もあったし「これ聞いて気づかないとかどういう頭してんの??」と思う決定的な瞬間はいくつもあった。しかしジョーンは気づかなかった。いや本当は気づいていたが、気づかないふりをずっと続けていたのだろう。そのほうが楽だから。 もうマジでジョーンが楽な方に逃げた瞬間天を仰いだね。スカッとジャパンを期待してたから。 問題はジョーンに現実を教えなかったロドニーや子供たち。子供たちは仕方ないにしてもロドニーの罪と責任は重い。この怪物を生み出したのはロドニーのせい。ロドニーも妻に現実を思い知らせるという面倒なことから逃げ続けた。ロドニーは被害者だが、その被害の原因はロドニー自身だ。 本当に恐ろしいのはジョーンがありふれた怪物であること。ジョーンのような人間はその辺にゴロゴロ転がっている。それが怖い。人間誰しも、自分の間違いに気付いたとしても直視したくないものだ。そして他人もそれをわざわざ直させるほどいい人たちではない。結局のところ自分で何とかするしかないのだと思わされた。
元の読書記録を見る春にして君を離れの感想・レビュー
アガサ・クリスティ/中村妙子
早川書房
ISBN: 9784151300813
読者の感想・読書記録
ブックミーに投稿された公開の読書記録です。感想はそれぞれの読者の意見です。
ひとりの恐ろしさをこうも時点を変えず表現できるのかと驚いた。 個人的には、途中から結論が見えてしまっていたのであまり楽しめず。
元の読書記録を見る殺人も 密室もない 答えもない あるのは果てない 砂漠だけ 誰もいない でも誰かいる 鏡の中から 見つめてる 真実は時に 残酷で 明日の自分が 肩すかし
元の読書記録を見る👏🏻👏🏻👏🏻
元の読書記録を見るあなたの感想も、読書仲間へ
ブックミーで読んだ本を記録して、感想を共有できます。
ブックミーアプリをダウンロード