直接的な表現は、どことなく他人行儀な印象にも感じる。こんなにもストレートに迷いなく描かれると、先手を取られたというか、“やられた”という悔しさがある。 変に勘ぐったり想像した自分が恥ずかしくなる。粘性のないサラッとしたタッチは、文章を物語を人を見る邪魔をしない。まるでこれは必要な要素だから書いてるだけですよ、と言われているようだ。その姿勢を終始貫いているからか、読み終わったあともスッとした爽快感が強く残る。重くのしかかることなく、第三者的立場から対照的な人生観を学んだことで、自分の人生を歩く足取りが明日から少し軽くなるような。 読者が第三者的立場を感じる裏には、作者自身がこの真逆とも取れる2人の人生の進み方を深く理解していることが感じられる。つまり、この登場人物は作者そのものなんじゃないか?すべて原体験が存在するんじゃないか? それほどのリアリティをこの温度加減で表せる筆者は、どんな人生をいかなる信念で歩んできたのだろう。そんな興味を抱かせるほどに、萌とるり子の人格がはっきりと確立している。 くどくない、でも世論も私見も織り込んだ文章構成がとても気持ち良かった。
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唯川 恵
集英社
ISBN: 9784087477443
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