大江健三郎はこう書いている。「永い間、小説を書いて、「本当のこと」を書く技術と手法は作りあげたいと思う。時間が残されているとしたら、それを書きたいと思います。」 本当の事を云うのが僕にとってのこれからの分岐点を左右する大切な事なのかなと感じた。小説ではない大江健三郎の言葉に触れたのは初めてであり、大江健三郎の小説特有(頭の中にあるフランス語の文を日本語に訳したような)の文体だけでなく、このような文体でも心の内を表現出来るのだなと感激した。大江の友人や妻の兄の事、安部公房や大岡昇平や息子(大江光)のことについても書いている。以前大江の著書「個人的な体験」を読んだ。この本は頭部に外傷を持った息子を産んだ大江の心情の変化を表した私小説的なものである。実際に親密な手紙ではこの息子との関係や思いを綴っていて大江健三郎との距離の近さを感じることが出来たと思う。 これからの自分が、どう「本当のこと」を表現していくのかに不安と期待を抱けた。そのためにいろいろな文学に触れ、文芸に触れ、言葉を探すことに今は夢中で過ごしている。 「私は入り込んでしまう窮境を自分に乗り越えさせてくれる「親密な手紙」を、確かに書物にこそ見出して来たのだった」 大江健三郎「親密な手紙」より この先も僕の中にある心のわだかまりを解消してくれるのは、大江健三郎の言う「本当のこと」なのかもしれない。
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大江 健三郎
岩波書店
ISBN: 9784004319931
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