親密な手紙
大江 健三郎
岩波書店
2023年10月24日
概要
「窮境を自分に乗り超えさせてくれる「親密な手紙」を、確かに書物にこそ見出して来たのだった」。渡辺一夫、サイード、武満徹、オーデン、井上ひさしなどを思い出とともに語る魅力的な読書案内。自身の作品とともに日常の様々なできごとを描き、初めて大江作品に出会う人への誘いにもなっている。『図書』好評連載。 一章 不思議な少年 困難な時のための 感受性のある個性 ブクブク 本当のこと 「器用仕事」 人間を慰めることこそ ヒヨドリ再説 新訳に誘われて 死者たちの時 ジョイスと武満 作曲家と建築家 二章 バロックのブクブク 愛をとりあげられない 幼児が写真を見る 品格の問題 ナンボナンデモ 返 礼 ノリウツギの花 真っさらのタンクロー 短篇作家の骨格 衿子さんの不思議 生活の隙間 三章 様ざまな影響 茫然たる自分の肖像 復 権 心ならずも 伊丹十三の声 しっかりやりましょう! バーニー・ロセット 毎日毎日うつむいて ラブレー翻訳は続く キツネの教え 同級生 希望正如地上的路 四章 不確かな物語 もぐらが頭を出す 同じ町内の 鐘をお突き下されませ ボーヨー、ボーヨー 偶然のリアリティー 実際的な批評 グルダとグールド 本質的な詩集 先生のブリコラージュ(一) 先生のブリコラージュ(二)
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櫻井さんの感想・評価
大江健三郎はこう書いている。「永い間、小説を書いて、「本当のこと」を書く技術と手法は作りあげたいと思う。時間が残されているとしたら、それを書きたいと思います。」 本当の事を云うのが僕にとってのこれからの分岐点を左右する大切な事なのかなと感じた。小説ではない大江健三郎の言葉に触れたのは初めてであり、大江健三郎の小説特有(頭の中にあるフランス語の文を日本語に訳したような)の文体だけでなく、このような文体でも心の内を表現出来るのだなと感激した。大江の友人や妻の兄の事、安部公房や大岡昇平や息子(大江光)のことについても書いている。以前大江の著書「個人的な体験」を読んだ。この本は頭部に外傷を持った息子を産んだ大江の心情の変化を表した私小説的なものである。実際に親密な手紙ではこの息子との関係や思いを綴っていて大江健三郎との距離の近さを感じることが出来たと思う。 これからの自分が、どう「本当のこと」を表現していくのかに不安と期待を抱けた。そのためにいろいろな文学に触れ、文芸に触れ、言葉を探すことに今は夢中で過ごしている。 「私は入り込んでしまう窮境を自分に乗り越えさせてくれる「親密な手紙」を、確かに書物にこそ見出して来たのだった」 大江健三郎「親密な手紙」より この先も僕の中にある心のわだかまりを解消してくれるのは、大江健三郎の言う「本当のこと」なのかもしれない。
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