ひろき成瀬は信じた道をいく
成瀬は信じた道をいく

成瀬は信じた道をいく

宮島 未奈

新潮社

2024年01月24日頃

概要

唯一無二の主人公、再び。その前途、誰にも予測不能! 成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!? 読み応えますますパワーアップの全5篇!

ステータス

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メモ

23.「わたしも島崎が東京に行くと聞いたとき、心身のバランスを崩したんだ。きっと自分の世界に穴が空いて、そこに足を取られたんだろうな」 「北川にとって、ゼゼカラは小さな存在かもしれない。でも、小さな歯車が欠けても仕掛け全体が回らなくなるように、ゼゼカラの存在がどこか大事なところに入っていたということだ」 24.「道を歩いている人がいるだけでも犯罪抑止につながるんだ。意外とけが人や病人に出くわすこともあって、これまで二回救急車を呼んだ」 25.「何になるかより、何をやる…

23.「わたしも島崎が東京に行くと聞いたとき、心身のバランスを崩したんだ。きっと自分の世界に穴が空いて、そこに足を取られたんだろうな」 「北川にとって、ゼゼカラは小さな存在かもしれない。でも、小さな歯車が欠けても仕掛け全体が回らなくなるように、ゼゼカラの存在がどこか大事なところに入っていたということだ」 24.「道を歩いている人がいるだけでも犯罪抑止につながるんだ。意外とけが人や病人に出くわすこともあって、これまで二回救急車を呼んだ」 25.「何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」 33.「わたしに言えるのは、先のことはわからないということだ。来年の今ごろ、北川にも心から信用できる友だちができているかもしれない」 39.「急激な血糖値の上昇を抑えるため三十回は嚙むようにしているそうで、早食いの慶彦は途中から合流しても同じぐらいに食べ終わる。」 45.「ファイルにはあかりが取り上げられた新聞やフリーペーパーの記事を収めている。ときどき取り出しては酒のつまみに思い出をながめ、懐かしさに浸るのがお気に入りだ。」 59.「でもあれは感情が表に出ていないだけで、ちゃんと喜んでいたらしい。」 66.「ファイルに収められた思い出のあかりじゃなくて、今のあかりを見るべきだった。」 117.成瀬がぜひ見せてほしいというので、スマホを渡した。 「へぇ、すごいじゃないか。一眼レフで撮るのか?」  (純粋な人への興味。上機嫌。) 124.「お父さんはいつもと変わらない様子だけど、お母さんはスマホを持って少し不満げな顔をしている。」 125.きっとおじいちゃんとお父さんはお兄ちゃんも三代連続の市議会議員にさせたいんだろう 126.「何言ってるの、四代目観光大使が生まれるまでまだ生きなきゃ」 128.「だって一生ものの医師免許と違って、観光大使のたすきなんて一年だけだから。」 142.「これからは、かれんの好きなことをしてみたら?」  (大津市観光大使の初仕事を終えたカレン。三代連続観光大使であるカレンは子供の頃から、そうなるように教育されてきた。カレンにとってはそれが当たり前だったから違和感を持たなかったようだが、実際に就任して以降も母の呪縛を感じ違和感を持ったという場面。)  (やはり、伝統やら家業やらは、「本来の目的」と「継続に対する執着」が混同されやすい。文化人類学の講義でも扱っているが、現代の伝統は、ただ形式的に受け継がれているケースが多いように思う。)  (カレンの場合も、小さい頃から「観光大使になる」という母たちの執着によって育てられ、ある種、洗脳のような状態にある。それ自体は否定しないが、母があまりに執着するあまり、カレンを母の第二の身体かのように接するのがやるせない。「夢を託す」と言えば聞こえはいいが、それは「呪縛」でしかない。) 165.「観光大使の成瀬はわたしの知ってる成瀬と違う。こんな表情ができるようになったのだと思うと、なんだか寂しくなる。」  (前作で言及した分人性、2作目では顕著に出てくる。)

ひろきさんの感想・評価

好きな自分でいればいい。 成瀬はそれを教えてくれる。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー みらいちゃん、カレン、呉間氏、そして島崎。 それぞれ、自身の信じるものや、アイデンティティ、存在意義などに悩みを抱えていた。 成瀬は自身の行動を持って 彼女らの悩みに応えてくれた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 本作、カレンのお話は書き下ろしなのだが、 随分とグロいものだった。 私自身、家業の話はあるが、作中に「だって一生ものの医師免許と違って、観光大使のたすきなんて一年だけだから。」とあるように、それとは違う。 「地域の伝統継承」が近いと思う。 文化人類学で学習しているところだが、 伝統継承は形式に囚われた、非本質的なものが多くなっているように思う。教典を盲信し、時代錯誤なことをするようなものだ。 また、カレンの話で問題なのは、親の呪縛により、カレン自身のアイデンティティが破壊されていた点である。親が子に自分の夢を重ねるというのはよく聞く話だが、幼少期はそこに対する取捨選択ができない。 解像度がやけに高く、 カレンの話だけある意味浮いていた。

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