私の馬
川村 元気
新潮社
2024年09月19日頃
概要
あの瞳に射抜かれて、私は一億円盗んだ。感動の疾走エンタテインメント! 「ストラーダ、一緒に逃げよう」。共に駆けるだけで、目と目を合わせるだけで、私たちはわかり合える。造船所で働く事務員、瀬戸口優子は一頭の元競走馬と運命の出会いを果たす。情熱も金も、持てるすべてを「彼」に注ぎ込んだ優子が行きついた奈落とは? 言葉があふれる世界で、言葉のない愛を生きる。圧倒的長編小説!
ステータス
読んだ
メモ
26.「笑ってご機嫌取るのは人間だけだ」 ずっとそうやって生きてきた。 「媚びるのはやめろ」 どうしたらいいのか。助けを求めるように麦倉を見た。 「息を合わせろ。お互い動物だ」 40.分かりあうために発明された言葉が、我々はどこまでも分かり合えないということを今日も教えてくれる。 78.「...犬のことは信じられるんです。男みたいに裏切らないし、話さなくても私の気持ちをわかってくれる」 「それに...お金を払えば必ず手に入るのが、良いですよねえ」 85.何かを求めること…
26.「笑ってご機嫌取るのは人間だけだ」 ずっとそうやって生きてきた。 「媚びるのはやめろ」 どうしたらいいのか。助けを求めるように麦倉を見た。 「息を合わせろ。お互い動物だ」 40.分かりあうために発明された言葉が、我々はどこまでも分かり合えないということを今日も教えてくれる。 78.「...犬のことは信じられるんです。男みたいに裏切らないし、話さなくても私の気持ちをわかってくれる」 「それに...お金を払えば必ず手に入るのが、良いですよねえ」 85.何かを求めることを馬鹿にして、自分の不幸を紛らわせているだけだ。/誰かを貶したし見下したりしても、あなたたちが幸せになることはないのに。 94.「彼女の進水式は、十日後と聞きました」 「船って必ず女性の名前をつけるじゃないですか/僕はもともと船大工をやってたからわかるんですけど、船ってやっぱり女としか言いようがない。大昔に船を作っていたヨーロッパの奴らもそう感じてたんじゃないかな。お母さんのいうか、恋人というか、とにかく女なんです」 107.私は息を呑む。今ここで溢れ出しそうな気持ちを、どう表したらいいのだろうか。 「言葉にしなくていい」 私の隣で、ストラーダを見つめていた麦倉が口を開く。 「この世界のほとんどは、言葉に出来ないもんだ」 121.「店員をロボットにする必要あったのかしら?自動掃除機の上に食事を載せて運んでいるみたいで、食べる気なくなるわ。そこまで人件費が浮くとも思えないし」 10代の兄妹が父親と三人で食事をしていた。/父親はうどんを一口啜ったあと、ずっとスマートフォンに目を落としたままだ。/スマホを見続ける父親の前で、カレーとドリアを食べている兄妹は目を合わせることなく、黙々とスプーンを口に運ぶ。その様は、まるで牛が餌箱に首を突っ込んでいるのとさほど変わらなく見える。 122「やっぱり馬が最高よね。お金はかかるけれど、どこまでもわかりあえる」 「それでも...たまに言葉が欲しくなるときがあるの。戌井クンは馬よりバカで、売れていないくせに枕もできないダメな子だけど、たくさん話してくれる。どんなに中身がなくたって、私に言葉をくれる」 /ドゥダッダ、ドゥダッダ。 ふたりのとりとめのない会話に重なるように、耳元であのメロディが聞こえてきた。 137.「申谷が話した“賢いハンス”の話な...馬がバカだってことじゃない。動物には言葉なんか使わなくとも、コミュニケーションをとる能力があるってことだ。人間だってそれができてたはずなんだが、もう無理だ。俺たちはすっかり洞察したり共感する能力を無くしてしまったからな」 「あんたは何が欲しいんだ?あいつに勝たせて、なにを取り戻したいんだ?」 「馬には言葉も、高い鞍も、一等賞も関係ない」 141.「あなたのことを信じていたのにどうして」この男たちは私のなにを見て、どこを信じていたのだろうか。心のない、形だけの言葉が私を男たちから遠ざける。 ○メモ ・裕福な人を怪訝に見るのは、自身が貧しているからだろうか。「貧すれば鈍する」というが、「貧する」を単に生活のこととして捉えるか、心のこととして捉えるか。生活が貧しても、心が豊かであれば、鈍することはないのではないだろうか。 (83.にて御子柴の初期が嫌に見えたが、馬に接する態度から優しさを感じたことから思った。が、それの優しさも単に表面的なものなのかもしれない。主人公の優子視点で書かれているため、すでに「心が貧した」描写になっている可能性もある。小説において、「共感」しながら読むべきか、「客観視」しながら読むべきか。どちらもするのがベストだろうが、私は共感して読みたい。本を味わいたい。) 121-現代の人の繋がりについて 100p.3h 4h読了
ひろきさんの感想・評価
清々しいほどに、救いなんてない。 みんな誰かにわかって欲しい。そのためにある言葉は、ただ人を傷つけるだけなのに。 みんな自分が正しいと思ってる。そう思ってないと生きていけない世の中だから。 未読だけれど、「コンビニ人間」にも通じるところがあると思う。今の社会、寂しすぎる。虚しすぎる。何のために生きているんだろう。誰のために生きているんだろう。それを認めて欲しくて。認められている実感が欲しくて。意味のない“なにか”に価値を見出して、この世を生きている。 この空虚感を補う“繋がり”について考えることが今の命題です。
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