薄雪金環日蝕
金環日蝕

金環日蝕

阿部 暁子

東京創元社

2025年03月19日頃

概要

輪郭は強烈な輝きを放っているのに、 彼の中心は闇に沈み、謎めいたままーー ひったくりの犯人を突き止めた。 事件はそれで終わらなかった。 私たちは、ある男が歩んだ道を 辿り直すことになる。 本屋大賞候補作家、渾身の長編 知人の老女がひったくりに遭う瞬間を目にした大学生の春風は、その場に居合わせた高校生の錬とともに咄嗟に犯人を追ったが、間一髪で取り逃がす。犯人の落とし物に心当たりがあった春風は、自分が通う大学で犯人探しをしようとするが、心配だから同行させてほしいと言う錬に押し切られ、二日間だけの探偵コンビを組むことに。かくして大学で犯人の正体を突き止め、ここですべては終わるはずだったーー。最新作『カフネ』が話題の俊英が〈犯罪と私たち〉を切実に描いた、いま読まれるべき力作長編。

ステータス

読んだ

メモ

春風はかつて誘拐された過去を持っており、人間の悪意や不正を強く憎む性格を形成していました。ある日、春風は偶然ひったくり事件に遭遇し、仲居合わせた錬とともに犯人を追いますが、逃げられてしまいます。現場に残されたストラップを手がかりに、春風と錬は調査を始めます。 二日間だけの“探偵コンビ”結成――春風と錬は「二日間だけ」協力して犯人捜しをすることに合意します。ふたりは大学内・周辺の購入者リストや当日の行動を洗い、ストラップ所有者の聞き取りを一軒ずつ進めていきます。聞き込みを通じ…

春風はかつて誘拐された過去を持っており、人間の悪意や不正を強く憎む性格を形成していました。ある日、春風は偶然ひったくり事件に遭遇し、仲居合わせた錬とともに犯人を追いますが、逃げられてしまいます。現場に残されたストラップを手がかりに、春風と錬は調査を始めます。 二日間だけの“探偵コンビ”結成――春風と錬は「二日間だけ」協力して犯人捜しをすることに合意します。ふたりは大学内・周辺の購入者リストや当日の行動を洗い、ストラップ所有者の聞き取りを一軒ずつ進めていきます。聞き込みを通じて小さな糸口を拾いながら、捜査は序盤らしい探偵ものの体裁を取ります。鐘下実、という学生の名前にたどりつくまで話は進みます。 ここで話は理緒に移ります。 理莉は貧困の中で育ち、妹の奈緒が暴行を受けたなど苦しい環境にありました。そんな中、皆川怜(かがや)という男が現れて彼女に手を差し伸べ、理莉は彼に恩義を感じます。皆川は自らを「カガヤ潤」と名乗り、その立場を利用して理莉に闇バイトを斡旋し、詐欺名簿の作成などを手伝わせます。理莉は家族を助けるため、その仕事に身を投じます。 鐘下もかつて皆川の下で働いていましたが、皆川に利用され続けることに反発し、名簿を奪おうと企てます。藤崎が“ひったくり犯”として表に出てきたのも、その名簿を使って皆川への反撃を図ったためでした。 錬は母子家庭で育ち、翠と陽という双子の弟妹を扶養していました。後に明かされる事実として、錬は加賀谷潤の実子ではあるものの、潤本人が錬やその家族を捨てたのではなく、かつてブラック企業「クリーンライフ」に勤めていた潤が、悪徳社長の圧迫から社員を救うために詐欺事件を起こして自首した結果、家族を離れざるを得なかったという事情が判明します。服役後、潤は遠くから錬たちを見守っていたようです。 物語の終盤では理莉や藤崎、その他の関係者を使っていた“カガヤ”とは実は皆川怜であって、本物の加賀谷潤ではなかったという事実が明らかになります。皆川は「カガヤ潤」を名乗って理莉たちを操作し、詐欺組織を動かしていました。 春風と錬が調査を進める中で、春風は自分の過去を乗り越えつつ事件の真相を追うことになり、錬は自らの父親との断絶、家族を支える重圧、そして真の父・潤を巡る苦悩と対峙します。理莉は、自らが加担した罪と恩義の板挟みに苦しみながらも、妹奈緒を守ろうとします。 結末 事件そのものが完全に清算されるわけではありませんが、春風、錬、理緒それぞれが未来に向い、希望の兆しを残すラストで物語は閉じられます。 理莉:貧困、家庭崩壊、暴力、犯罪への加担 錬:父親に捨てられたと思い込み、家族を背負う重圧 春風:誘拐という過去のトラウマ 加賀谷潤:罪を犯してまで人を救おうとした男 皆川怜(偽ガヤ):他人を操り、過去の闇に取り込まれた存在

薄雪さんの感想・評価

『カフカ』で本屋大賞をとった阿部暁子さんの推理小説。 ある日、春風は偶然ひったくり事件に遭遇し、仲居合わせた錬とともに犯人を追いますが、逃げられてしまいます。現場に落とされたストラップを手がかりに、春風と錬は調査を始めます。 二日間だけの“探偵コンビ”結成――春風と錬は「二日間だけ」協力して犯人捜しをすることに合意します。ふたりは大学内・周辺の購入者リストや当日の行動を洗い、ストラップ所有者の聞き取りを一軒ずつ進めていきます。聞き込みを通じて小さな糸口を拾って行きます。 やがて顕になるのは、単なる引ったくりという事件ではなく、大きな詐欺組織、そして社会事象でした。 春風、錬、理緒と言った愛らしい登場人物のそれぞれの過去や苦悩を通じて、犯罪と私たちを描いていきます。 物語の登場人物たちは皆、「闇の中」に生きています。彼らは皆、人生の「太陽」を闇(=罪や嘘、悲しみ)に覆い隠されています。 でも完全な“皆既日食”ではなく、どんなに闇が深くても、わずかに残る光=希望や人間らしさがある。この“消えない光の輪”が、「金環日食」というタイトルに込められている、そんな風に感じました。 ちょっと話は入り組んでいて、わかりづらかったかな。

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