薄雪ツナグ
ツナグ

ツナグ

辻村 深月

新潮社

2012年09月

概要

一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員……ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。

ステータス

読んだ

メモ

辻村深月さんの『ツナグ』 本作の世界では、ある特殊な職業として、使者(ツナグ)が存在します。使者は、生きている人(依頼人)と亡くなった人(死者)との再会を、一生に一度だけ実現させることができます。死者の側にも、その面会を了承する必要があり、その機会を一度しか持てません。 物語は、複数の依頼人たちの物語を連作形式で描いていきます。 「アイドルの心得」 依頼人、平瀬愛美の視点で語られます。使者は高校生のおしゃれな若い男性でした。 平瀬愛美は、かつて路上でアイドルのサヲリに…

辻村深月さんの『ツナグ』 本作の世界では、ある特殊な職業として、使者(ツナグ)が存在します。使者は、生きている人(依頼人)と亡くなった人(死者)との再会を、一生に一度だけ実現させることができます。死者の側にも、その面会を了承する必要があり、その機会を一度しか持てません。 物語は、複数の依頼人たちの物語を連作形式で描いていきます。 「アイドルの心得」 依頼人、平瀬愛美の視点で語られます。使者は高校生のおしゃれな若い男性でした。 平瀬愛美は、かつて路上でアイドルのサヲリに救われた経験があり、心の支えとしていました。使者にはアイドル・水城サヲリに会いたいという願いを託します。サヲリは突然死しており、愛美はその死後、心の拠り所を失っていました。依頼を受けた使者は、死者側に交渉をし、サヲリの了承を得て、愛美とサヲリの再会をセッティングします。 サヲリは、彼女が贈った手紙やプレゼントのことは憶えていると言い、手紙の中に死にたいと書いてあったのを指摘し、死ぬのを止めるために会うことにしたと語り、いくつかのアドバイスをくれました。そして、夜明けと共にサヲリは姿を消します。愛美がロビーに戻ると、使者が待っていた。感想を求められた愛美は、「アイドルって、すごい」と答えました。 「長男の心得」 年老いた母親の余生を支えながら、息子・畠田靖彦は母にがん告知をしなかったために心の重荷を抱えていました。彼は母の死後、使者に母との対話を願い、母と面会します。靖彦が面会場所の部屋に入ると、母が迎えます。頬に触れられ、靖彦の目に涙がにじみます。靖彦は自分の病名を知っていたかと母に尋ねます。母が癌だと診断されたとき、弟の久仁彦は孫や親戚には告知しようと言ったが、靖彦はそれを止めました。その結果、ツルが亡くなった時に、太一や姪の美奈からは「知っていればもっと会いに行ったのに」と責められています。母は、「あんたは優しいよ」と答えます。そして、久仁彦を大学にやると言いながら、実は追い出したのではないか、自分が店を継いで悪かったと気に病んでいることを、自分も嫁の祥子も気づいていたし、たぶん久仁彦本人も気づいていたからもうそのことは気にするなと言います。母はさらに孫の太一のことをいい子だと語ります。その数年後、母の遺した日記から、母が父に太一を連れて会いに行っていたがわかります。彼女は、孫の太一を夫に紹介したのだと。そして、父が太一の頭を撫で回したように、自分もいつか太一の子にそうするのだろうかと思います。 「親友の心得」 嵐美砂と御園奈津は友人でした。同じ演劇部に所属し、美砂は1年生の頃から役をもらって演じてきた。美砂は素直な奈津を見下していました。3年生が抜けたときの劇にて、美砂の他に奈津も主役に立候補し、オーディションで奈津が選ばれました。次第に嫉妬心が高まっていく美砂は、奈津が怪我をすればいいと思うようになり、12月の帰り道、凍った路面で奈津がスリップすることを願って、坂道の水道をひねりました。翌朝、奈津は坂の途中で自転車ごと滑り落ち、下の道で車と衝突して亡くなりました。美砂は、奈津が救急車の中でうわごとのような言葉をつぶやいた中に、「嵐、どうして」という言葉があったと聞いた。美砂は、水道をひねる自分の姿を奈津が見ていたのではないかと思った。現場検証の結果、坂道は凍っていなかったことが分かりましたが、もしも別の人が使者を通じて奈津に会えば、自分が殺意を持って水道をひねったということを話すのではないかと恐れました。よって、そうなる前に奈津に会い、自分から殺意があったことを告白して謝罪しようとかんがえました。 面会した奈津は、自然な態度で美砂を迎えました。美砂は、奈津が水道のことを知らないのだと考え、謝罪をやめました。別れる直前、奈津は歩美から伝言を聞いてくれと美砂に願った。 奈津からの伝言を尋ねると、「道は凍ってなかったよ」と歩美は答えました。美砂は、奈津が自分のやったことを知っていたのだと悟りました。しかし、奈津は自分もその話題を持ち出さず、親友に戻れる最後の機会を奪いました。そして、困惑する歩美の前で、激しい後悔の念にさいなまれて泣き崩れた 「待ち人の心得」 9年前の春、功一は飲み会の帰り、強風にあおられた少女が看板にぶつかり、怪我したのに出くわし、助けます。日向キラリと名乗った少女の律儀さに功一は次第に好意を抱くようになり、やがて二人は同棲を始めます。出会って2年後、功一のプロポーズを受け入れたキラリは、バイトの友だちと旅行に行くと言って出かけたまま、帰ってきませんでした。その後もキラリの手がかりは全くつかめませんでした。 7年後、使者について知った使者を呼び出します。キラリの本名が鍬本輝子といい、7年前のフェリー事故で亡くなったと告げられます。 面会当日、ホテルの部屋で待っていたキラリは、身の上を話し始めます。出会った当時は20歳と言っていたが、実は17歳だったことを語ります。熊本の実家にいる頃は親子げんかが絶えず、思いつきで家出して東京に出てきたこと、功一にプロポーズされたことで、ちゃん謝罪を両親にしようと考えたこと、そして、フェリー事故に巻き込まれたと語ります。そして、キラリは幸せだったと語ります。そして、キラリに託された遺品から実家の住所を知った功一は、キラリの両親を訪ねることを決めます。 「使者の心得」 これまでの4章にて、依頼人と死者を繋いできた歩美自身の物語です。歩美の祖母は、入院したのを機に使者の仕事を歩美に継いでもらいたいと言い出し、歩美はそれを了承します。また、使者の道具である鏡について説明を受けます。歩美の両親は、彼が小学1年生の時に謎の死を遂げ、浮気を疑われた父が母を絞め殺し、舌を噛んで自殺したのだろうということになっていました。 こ使者の仕事を継ぐことになった歩美は、依頼人と会って詳しい依頼を聞き出すことと、死者と依頼人との面会の日にホテルで立ち会うことから始めます。そして平瀬愛美、畠田靖彦、嵐美砂、土谷功一の仕事をこなしていきます。 歩美は、きっと父は母に使者のことを話しており、鏡を覗くなと強く警告しなかったため、母は、父と仲違いをしたまま亡くなった祖父を父に会わせたくて、鏡を自分で使おうとしたのではないかと語った。それを聞いた祖母は、それを認めます。 歩美は、将来別の人に使者の力を譲ったら祖母に会いたいと言います。そして祖母は、歩美に使者の力を引き渡す儀式を始めます。

薄雪さんの感想・評価

辻村深月さんの『ツナグ』 本作の世界では、ある特殊な職業として、使者(ツナグ)が存在します。使者は、生きている人(依頼人)と亡くなった人(死者)との再会を、一生に一度だけ実現させることができます。死者の側にも、その面会を了承する必要があり、その機会を一度しか持てません。 物語は、複数の依頼人たちの物語を連作形式で描いていきます。 「アイドルの心得」 依頼人、平瀬愛美の視点で語られます。平瀬愛美は、かつて路上でアイドルのサヲリに救われた経験があり、心の支えとしていました。サヲリは突然死してしまい、愛美はその死後、心の拠り所を失っていました。依頼を受けた使者は、サヲリの了承を得て、愛美とサヲリの再会をセッティングします。サヲリが彼女に会う理由とは。 「長男の心得」 年老いた母親の余生を支えながら、息子・畠田靖彦は母にがん告知をしなかったために心の重荷を抱えていました。彼は母の死後、使者に母との対話を願い、母と面会します。靖彦が面会場所の部屋に入ると、母が迎えます。頬に触れられ、靖彦の目に涙がにじみます。頑固な中年男性の語る言葉とは。 「親友の心得」 嵐美砂と御園奈津は友人でした。同じ演劇部に所属し、美砂は1年生の頃から役をもらって演じてきた。美砂は素直な奈津を見下していました。3年生が抜けたときの劇にて、美砂の他に奈津も主役に立候補し、オーディションで奈津が選ばれました。次第に嫉妬心が高まっていく美砂は、奈津が怪我をすればいいと思うようになり、12月の帰り道、凍った路面で奈津がスリップすることを願って、坂道の水道をひねりました。翌朝、奈津は坂の途中で自転車ごと滑り落ち、下の道で車と衝突して亡くなりました。美砂が使者の奈津に伝えようとしたこととは。 「待ち人の心得」 9年前の春、功一は飲み会の帰り、強風にあおられた少女が看板にぶつかり、怪我したのに出くわし、助けます。日向キラリと名乗った少女の律儀さに功一は次第に好意を抱くようになり、やがて二人は同棲を始めます。出会って2年後、功一のプロポーズを受け入れたキラリは、バイトの友だちと旅行に行くと言って出かけたまま、帰ってきませんでした。その後もキラリの手がかりは全くつかめませんでした。キラリはいったいどこに行ったのか。 「使者の心得」 これまでの4章にて、依頼人と死者を繋いできた歩美自身の物語です。歩美の祖母は、入院したのを機に使者の仕事を歩美に継いでもらいたいと言い出し、歩美はそれを了承します。使者の役目と仕組み、そしてその苦しみとは。 とても読みやすい小説です。サクサク読めるので1日で読めてしまいます。 面白いのは「親友の心得」でしょうか。他の作品はみな心温まる話となっているのですが、この短編は主人公嵐の奈津に対する劣等感と、罪を隠そうとする浅ましさ、そして全てを見透かされる人間の惨めさなどが表現されています。ミステリ仕立てにもなっていて、辻村さんの本領発揮といったところなんじゃないでしょうか。

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