薄雪オーデュボンの祈り
オーデュボンの祈り

オーデュボンの祈り

伊坂 幸太郎

新潮社

2003年12月

概要

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作、待望の文庫化。

ステータス

読んだ

メモ

伊坂幸太郎さんの『オーデュボンの祈り』 主人公は伊藤(28歳)です。彼は元システムエンジニアで、コンビニ強盗をして捕まりました。彼を捕まえたのは、中学時代の同級生で今は警察官の城山でした。パトカーで連行される途中、偶然にも事故が起こり、その隙に伊藤は逃げることができました。しかし、そこから先の記憶がありませんでした。 意識を取り戻すと、彼は見知らぬ島である萩島にいました。この島は、長い間外界との交流を断っていると言われています。轟という島で唯一島内外を行き来する男に出会い…

伊坂幸太郎さんの『オーデュボンの祈り』 主人公は伊藤(28歳)です。彼は元システムエンジニアで、コンビニ強盗をして捕まりました。彼を捕まえたのは、中学時代の同級生で今は警察官の城山でした。パトカーで連行される途中、偶然にも事故が起こり、その隙に伊藤は逃げることができました。しかし、そこから先の記憶がありませんでした。 意識を取り戻すと、彼は見知らぬ島である萩島にいました。この島は、長い間外界との交流を断っていると言われています。轟という島で唯一島内外を行き来する男に出会い、この荻島に連れてこられたのです。 荻島にはこの百五十年間、島外からの人間が来たことはなく、伊藤が二人目でした。そして三週間前、一人目となる曾根川という男も轟が連れてきたとのこと。 伊藤は訳が分からないまま、日比野という馴れ馴れしい男に荻島を案内してもらいます。 癖の強い島民が多い中でも特に伊藤を驚かせたのが、優午という名前の喋るカカシでした。 優午は未来を見通すことができ、伊藤が来ることを予め知っていました。そして、荻島についてもいろいろ教えてくれます。 日比野から、この島には足りないものがあると聞きます。そして、それを外の人間が置いていくというものだという言い伝えがあることを教えられます。 島の住人たちはどこか風変わりで、たとえば桜という人物は島の法律のもとで人を殺すことが許されている存在です。また、園山という画家は「反対のことしか言わない」という奇妙な言動を続けています。 島でもっとも異様な存在は、優午(ゆうご)というカカシです。彼は人間の言葉を話し、1週間先までの未来を予知できるそうです。 普段未来のことを教えてくれない優午ですが、帰りたいと思うまで帰らない方が良い、飛び降りそうな人がいたら助けなさい、元恋人である静香に手紙を出し続けなさい、自転車をこぎましょうなど、様々なアドバイスをくれます。 しかし物語が進む中で、その優午が殺害されてしまいます。彼はバラバラにされ、頭部が持ち去られるという凄惨な事件が起こります。 優午はこの未来を予測できなかったのでしょうか。 伊藤は独自に調査することを決め、まずは優午から教えてもらったオーデュボンについて教えて教わるために田中の元を訪れます。田中が話すには、オーデュボンは動物学者であり、リョコウバトという種類の鳩を発見しました。彼らは億単位の群れで行動しますが、人間の乱獲によって絶滅に追いやられてしまったのです。優午はそんなオーデュボンに自分を重ね、この島がもしリョコウバトのような末路を辿るのであれば、オーデュボンのように見ているしかないと嘆いていました。 日比野は佳代子とデートすることになり、伊藤に自転車をこいでほしいと依頼してきます。それは優午から言われた言葉であり、そこに何かを感じた伊藤は引き受けることにします。伊藤は草薙に自転車を借り、日比野のデートを盛り上げます。 しばらくしめ、曾根川が殺害されているのも発見されました?優午を殺害した犯人が見つかっていないにもかかわらず、謎がまた一つ増えてしまいました。 今度は百合がいなくなったと草薙から知らされます。 その後、伊藤は日比野に轟が怪しいと話を持ち掛け、百合を監禁しているのではと考えましたが、そのタイミングで百合は自分で戻ってきました。 話を聞きたいのは山々ですが、まずは轟のことを対処することにしました。伊藤は今から渡す葉書を急いで静香に渡してほしいと依頼します。 轟が島を出てから捜索することにしたため、その間に百合に会って話を聞きます。 百合は至って平然としていましたが、誰が亡くなったのだという伊藤の問いに、表情を曇らせます。伊藤は気が付きます。 百合が看取ったのは、園山の妻なのだと。 実は園山は狂ってなどいなく、嘘しか喋らないという嘘をつき続けていたのです。園山の妻は生きていて、つい朝方に亡くなったのです。 妻は五年前の暴行で顔にひどい傷を追い、外に出られなくなってしまいました。そこで園山は気が狂ったふりをすることで家に人を近づけず、妻の世話に専念することにしたのです そんな中、またしてもトラブルが発生します。 足の不自由な田中が見張り台に昇り、無理に下ろそうとしたら飛び降りると言うのです。伊藤は彼を助けるために上へ昇ります。 梯子を昇る間、伊藤は優午のことを考え、ここにきて真相を理解します。優午は確かに未来を見通していて、伊藤に指示を出していたのです。 そして頂上につき、伊藤は言います。 田中が優午を殺害したのであり、それを優午が望んだのだと。自殺できない優午は、誰かに殺してもらうしかないのです。 また、頂上には絶滅したはずのリョコウバトがいました。曾根川の目的が、絶滅したはずのリョコウバトを撃ち殺すことだったと判明します。 鳥を愛する優午にとって、それは許せないことでした。 だから彼は田中に指示を出し、曾根川を河原に呼び出しました。その晩、伊藤の漕いでいた自転車のライトが光ったのです。すると、驚いた曾根川は転び、同時に田中は手からブロックを離しました。そして、彼は死にました。謎はこれで解決しました。 田中はオーデュボンの書いたリョコウバトの求愛の絵を紙飛行機にして空に放ちました。 また優午の頭は田中が途中まで持ち帰り、さらにそれを園山が持ち帰ったことが分かりました。 それを伊藤は、園山の妻に優午が謝罪したかったのだと推測します。 また、伊藤の元恋人である静香に目を付けた城山は、彼女のことを狙っていました。薄汚い男を雇い、乱暴をしようとまで考えていました。 しかし寸前で、伊藤が急ぎだと言って渡した葉書を持った轟が二人の前に現れ、静香は伊藤が荻島にいることを知ります。混乱する静香ですが、ここでとうとう城山は本性を露にし、轟を脅迫して荻島に連れて行かせます。静香も同行させていました。 荻島に到着した城山たち。彼らは桜の家に寄ります。城山は桜が植えた花の種が埋まった場所を踏んでしまいます。事情が呑み込めないまま、城山は桜に拳銃で撃たれます。 伊藤と静香は再会します。そして伊藤は最後の謎に気が付きます。 轟は、地下室にオーディオ機器しかなかったのではなく、オーディオ機器を隠していたのです。伊藤は、島に足りないものが何かを思いつきます。それは『音楽』でした。 伊藤は静香に持ってきたアルトサックスを丘の上で吹いてほしいとお願いします。 荻島は、彼女を百年以上も待っていたのだと。 そして最後に、丘の上には園山が持ってきた優午の頭がありました。

薄雪さんの感想・評価

伊坂幸太郎さんの『オーデュボンの祈り』 デビュー作です。とても不思議な小説です。 主人公は伊藤です。彼は元システムエンジニアで、コンビニ強盗をして捕まりました。彼を捕まえたのは、中学時代の同級生で今は警察官の城山でした。パトカーで連行される途中、偶然にも事故が起こり、その隙に伊藤は逃げることができました。しかし、そこから先の記憶がありませんでした。 意識を取り戻すと、彼は見知らぬ島である萩島にいました。この島は、長い間外界との交流を断っていると言われています。轟という島で唯一島内外を行き来する男に出会い、彼が伊藤をこの荻島に連れてきたのです。 荻島にはこの百五十年間、島外からの人間が来たことはなく、伊藤が二人目でした。そして三週間前、一人目となる曾根川という男も轟が連れてきたとのこと。 伊藤は訳が分からないまま、日比野という馴れ馴れしい男に荻島を案内してもらいます。 癖の強い島民が多い中でも特に伊藤を驚かせたのが、優午という名前の喋るカカシでした。 優午は未来を見通すことができ、伊藤が来ることを予め知っていました。そして、荻島についてもいろいろ教えてくれます。 日比野から、この島には足りないものがあると聞きます。そして、それを外の人間が置いていくというものだという言い伝えがあることを教えられます。 そして萩島での物語が始まります… 伊坂幸太郎さんの小説にはいつもとても残酷な人間や現実が出てきます。それでも、それを笑い飛ばすようなユーモアや、強い人間も。 この作品もそういった人間讃歌に溢れている気がしました。 萩島に足りなかったもの。それも、とても美しいものでしたね。 「あの丘で、君はアルトサックスの演奏をするんだよ。チャーリー・パーカーでも、君が好きで編曲したビートルズでもいい。あそこで思い切り吹くんだ。」

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