薄雪成瀬は天下を取りにいく
成瀬は天下を取りにいく

成瀬は天下を取りにいく

宮島 未奈

新潮社

2025年06月25日

概要

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」幼馴染の島崎みゆきにそう宣言したのは、中学二年生の成瀬あかり。閉店を間近に控える西武大津店に毎日通い、ローカル番組の中継に映るといいだした。さらに、お笑いコンビ・ゼゼカラでM-1に挑み、高校の入学式には坊主頭で現れ、目標は二百歳まで生きること。最高の主人公の登場に、目が離せない! 本屋大賞を受賞した圧巻の青春小説!

ステータス

読んだ

薄雪さんの感想・評価

宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』。 滋賀県大津市を舞台にした青春連作短編集で、主人公・成瀬あかりの中学2年から高校3年までの成長を描いた全6編で構成されています。成瀬シリーズの第1作であり、2024年の本屋大賞を受賞した話題作です。いや、面白いです。 「ありがとう西武大津店」 中学2年の成瀬あかりは、閉店を控えた西武百貨店に「この夏を捧げる」と宣言します。毎日通い、ローカル番組に映ることを目指しますが、テレビは彼女を避けるように放送します。彼女の奇行に幼馴染の島崎みゆきは付き合い続けます。 「膳所から来ました」 成瀬は「お笑いの頂点を目指す」と言い出し、島崎と漫才コンビ「ゼゼカラ」を結成します。M-1グランプリに挑戦し、文化祭でも舞台に立ちます。 「階段は走らない」 大人になった稲枝敬太が西武大津店の閉店をきっかけに旧友と再会します。小学校時代の同級生・タクローを探すため、Webサイトを立ち上げます。 「線がつながる」 高校入学式で坊主頭の成瀬と再会した大貫かえで。自分のことを地味な存在だと思っています。東大を目指しています。目立つ成瀬に嫌悪感をもっていましたが、東大見学の際に成瀬に会い、ぶれない成瀬に対して徐々に理解と共感を持っていくようになります。 「レッツゴーミシガン」 かるた大会で出会った広島の高校生・西浦航一郎が成瀬に一目惚れします。琵琶湖の観光船「ミシガン」でデートすることになります。 「ときめき江州音頭」 高校3年の夏、島崎が東京へ引っ越すことを告げ、成瀬は動揺します。ゼゼカラも解散だと思い、二人で司会を務める地元の夏祭りに覚悟を持って臨みます。 成瀬の「ぶれない生き方」に焦点があっているような作品ですが、そこまで実はぶれていないわけではありません。作品内で島崎も指摘していますが、M1への挑戦はやめちゃうし、髪の毛を3年間切らない宣言も2年半でやめてしまいます。それなりにぶれている成瀬。 また、猪突猛進に見える成瀬ですが、島崎がいなくなると知ってすごく動揺したり、西浦くんからの告白の返事をしっかりと考えてすぐに返答したりと、周りの人間にも気を遣い、考えて行動しています。 いろいろな人が書かれていますがこの作品が胸を打つのは、彼女の猪突猛進さでもなく、奇行でもなく、彼女の胸の奥にある真っ直ぐな情熱とひたむきさ、青春の煌めきなんです。

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