夜空に泳ぐチョコレートグラミー
町田 そのこ
新潮社
2021年03月27日頃
概要
思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋、そして、ともには生きられなかったあの人のことーー。大胆な仕掛けを選考委員に絶賛されたR-18文学賞大賞受賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」。すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。
ステータス
読んだ
メモ
町田その子さんの『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』 5つの短編から成っています。登場人物は少しづつ重なっている感じです。 「カメルーンの青い魚」 サキコは、中学生の時に幼馴染のりゅうちゃんのケンカを止めに入り前歯二本を折ってしまう。サキコの前歯は差し歯になった。中学校卒業と同時にりゅうちゃんは町を出るが、ヤクザをやっているとか、悪い噂ばかり入ってきます。しかし、数年後に彼はサキコの祖母の通夜にフラリと帰って来てその時、一夜を共にした二人の間に赤ちゃんが出来ます。息子は啓太…
町田その子さんの『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』 5つの短編から成っています。登場人物は少しづつ重なっている感じです。 「カメルーンの青い魚」 サキコは、中学生の時に幼馴染のりゅうちゃんのケンカを止めに入り前歯二本を折ってしまう。サキコの前歯は差し歯になった。中学校卒業と同時にりゅうちゃんは町を出るが、ヤクザをやっているとか、悪い噂ばかり入ってきます。しかし、数年後に彼はサキコの祖母の通夜にフラリと帰って来てその時、一夜を共にした二人の間に赤ちゃんが出来ます。息子は啓太です。そして、12年の月日が流れ、ある日、みたらし団子をたべたサキコの差し歯が二本外れた時に、突然帰ってきます。商店街で彼は、カメルーンから来たという青い瞳のメダカを2匹買いサキコに押し付けます。「河へ逃がしてやれ」と言ってみたり、「ここでは、他のメダカにイジメられて死んでしまう」と言ってみたり。彼は息子の啓太に会うこともなく、大金と、青い二匹のメダカをサキコの家に置いて、また町を出ます。その日、啓太が小学校から帰って来るとメダカの一匹はすでに死んでいました。 「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」 ほぼ話の主役は晴子という中学生の少女。晴子は母親とほとんど断絶した関係にあり、祖母・烈子に育てられてきました。クラス内でいじめを受けることが続いた晴子ですが、夏の間新聞配達のアルバイトをしている同級生・啓太と出会い、少しずつ心を開いていきます。ある日、おとなしい晴子はいじめっ子のクラスメートを殴ります。祖母の烈子をからかわれたからです。啓太はそんな晴子を褒めます。啓太と晴子は展望台で夜空を見て話します。晴子はチョコレートグラミーのように烈子の口の中で守られてきました。だが、烈子は認知症で施設に入り、晴子は親戚の家に引き取られることになりました。晴子は強くなることを心に決めて親戚の家に越して行きます。 「波間に浮かぶイエロー」 軽食ブルーリボンのオーナー芙美さんは「おんこ」だ。そんな芙美さんの元に、昔の同僚環さんが転がり込む。環さんは妊娠していました。おそらく不倫している夫には知らせず子供を産むと言います。芙美と従業員沙世と環は共に生活を始める。芙美さんは、赤ちゃんの啓太の面倒をみたこともあり子供を育てることが手伝えると言います。 結局、環は夫の元に帰り、話し合うことを決意します。話の終盤、環のかつての同僚髙橋さんは既に亡くなっていたことがわかります。芙美さんはなりすまし、環の中の高橋さんを守ろうとしたのです。それを聞いて、最後に沙世も自殺した彼の最後の言葉をおもいだします。「沙世がいたらずっと生きていけるから」と言ったのです。 「溺れるスイミー」 — 主人公の唯は幼少期に父を失い、以後は母と二人で暮らしてきます。唯は地元のお菓子工場で働いており、同僚との結婚の話が持ち上がるなかで、自身の生き方について迷いが生じます。唯はやがてトラック運転手の宇崎と出会い、父親のような「移動する生き方」に惹かれていきます。しかし、宇崎の共に移動して生きていこうとする誘いも唯は断ります。群れにも場所にも唯は共生できないのです。でも、唯は明日からまた会社に行くことを決めます。いつか群れにも、場所にも共生できると信じて。 「海になる」 3回の流産のあと子供を死産し、夫に暴力を振るわれるようになった桜子。 貧血で倒れた時、雪が降る中ネグリジェ1枚で夫に外に追い出された時、助けてくれたのは長髪の男性・清音だった。そして今まさに命を絶とうとする桜子の前に清音があらわれます。桜子と清音は、2人で生きていくことを決めます。 桜子はもう子供が産めないため、助産師の資格を手に入れ、助産院を開きます。そして長い年月がすぎたとき、短編「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」に出てきた晴子を引き取ります。
薄雪さんの感想・評価
町田その子さんの『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』 5つの短編から成っています。登場人物は少しづつ重なっている感じです。 「カメルーンの青い魚」 サキコは、中学生の時に幼馴染のりゅうちゃんのケンカを止めに入り前歯二本を折ってしまう。サキコの前歯は差し歯になった。中学校卒業と同時にりゅうちゃんは町を出るが、ヤクザをやっているとか、悪い噂ばかり入ってきます。しかし、数年後に彼はサキコの祖母の通夜にフラリと帰ってて…。 「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」 ほぼ話の主役は晴子という中学生の少女。晴子は母親とほとんど断絶した関係にあり、祖母・烈子に育てられてきました。クラス内でいじめを受けることが続いた晴子ですが、夏の間新聞配達のアルバイトをしている同級生・啓太と出会い、少しずつ心を開いていきます。ある日、おとなしい晴子はいじめっ子のクラスメートを殴ります。 「波間に浮かぶイエロー」 軽食ブルーリボンのオーナー芙美さんは「おんこ」だ。そんな芙美さんの元に、昔の同僚環さんが転がり込む。環さんは妊娠していました。おそらく不倫している夫には知らせず子供を産むと言います。芙美と従業員沙世と環は共に生活を始めます。芙美さんは、赤ちゃんの啓太の面倒をみたこともあり子供を育てることが手伝えると言います。 「溺れるスイミー」 — 主人公の唯は幼少期に父を失い、以後は母と二人で暮らしてきます。唯は地元のお菓子工場で働いており、同僚との結婚の話が持ち上がるなかで、自身の生き方について迷いが生じます。唯はやがてトラック運転手の宇崎と出会い、父親のような「移動する生き方」に惹かれていきます。 「海になる」 3回の流産のあと子供を死産し、夫に暴力を振るわれるようになった桜子。 貧血で倒れた時、雪が降る中ネグリジェ1枚で夫に外に追い出された時、助けてくれたのは長髪の男性・清音だった。そして今まさに命を絶とうとする桜子の前に清音があらわれます。 どの話にも強い女性が出てきます。1人で子供を育てる、若くして自立を決意する、子供の産めなくなった身体を抱えて生きていこうとする。 町田その子さんの作品はたいてい女性が主役である気がします。 現代という生きづらい世の中で、苦しみながらそれでも立とうとする女性が描かれています。 わたしが好きなのは「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」かな。 「そして初めての世界があの魚にとって優しいものでありますように。生きやすい場所になりますように。」
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