夜空に泳ぐチョコレートグラミー
町田 そのこ
新潮社
2021年03月27日頃
概要
思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋、そして、ともには生きられなかったあの人のことー。大胆な仕掛けを選考委員に絶賛されたR-18文学賞大賞受賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」。すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。
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あんさんの感想・評価
自分の居場所、帰る場所を見つけることができない魚たちの物語。ただ生きている。大切な人がいる。幸せになってほしい人がいる。「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」啓太と晴子は名前のない関係。お互いに同じ匂いを感じて歩み寄る2人。一緒に見上げた夜空はきっとずっと忘れられないものだし、これから先の人生を照らし続けるほのかな優しい光になるはず。「波間に浮かぶイエロー」びっくりした。芙美さんは文雄さんで重史さんではなかったなんて。一件落着かと思ったら、そこには最後の願いが込められていた。重史さんは一生たまきさんのことが好きだった。そして、芙美さんは自分のためにも環さんのためにも重史さんのためにも、重史さんを守って貫いた。1人1人が大切な人を想っているからこその行動だったんだね。「海になる」桜子と清音の出会いは偶然ではなくて必然。私の目の前に広がる海にも誰かの苦しみや哀しみ、涙が沈んでいるのかな。だから夜の海はひっそりと暗くて切なく感じるのかな。哀しみで冷たくなった身体をお互いに温め合うことができる存在に巡り会えた奇跡。桜子が流した涙は、巡り巡って晴子に辿り着いた。「ひとは誰かを育むものになれる。」そう信じたい。すごく心が震えました。人が人を想う。その心が誰かに繋がる。これこそ優しさの連鎖。私が流した涙も大切な人を支えることができる糧だったらいいな。そうだったら嬉しいな。忘れることのできない忘れたくない大切な作品です。
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