しろくまことり
ことり

ことり

小川洋子(小説家)

朝日新聞出版

2016年01月07日頃

概要

【文学/日本文学小説】人間の言葉は話せないけれど、小鳥のさえずりをよく理解し、こよなく愛する兄と、兄の言葉を唯一わかる弟。小鳥たちの声だけに耳を澄ます二人は、世の片隅でつつしみ深く一生を生きた。やさしく切ない、著者の会心作。解説・小野正嗣。

ステータス

読んだ

しろくまさんの感想・評価

この本を読んで久しぶりに無理なく涙が出た。 年々感情が希薄になっている気がしていた。所謂「御涙頂戴」には涙が出ない。自分にリンクすることではもちろん泣けるけど、他人にうまく感情移入ができなくなっていた。するフリはできるが、それでは涙まで出てこない。 繊細で優しくありたいと願う自分と、心の中の冷え切った感情を持つ自分とであまりにも差が開いてしまって、私はなんて冷酷な人間なんだろうなどと悩んでいたが、この本を読んだらなんだか全部吹っ飛んでいってしまった。吹っ飛んだほうがいいもんだから、ありがたい。 まず優しいのだ。世界は、世間は、社会は決して彼らに優しくはないけれど、主人公が紡ぐ言葉は、すなわち小川さんが紡ぐ言葉は、どれも優しい。そしてありのままである。 ありのままでいて優しいのは、美しい。 でもこの兄弟を見ている私はすごく胸が締め付けられるし、なんでもないシーンで号泣したりする。 かなしいとか悔しいとかいろんな感情が入り混じっているのかもしれないけれど、その中でも優しいとかあたたかいとかそういう感情も一緒に全部ごちゃ混ぜで、ぬるい涙が出る。 体温みたいにありのままの感情になれる。 心を取り戻したいならこの作品はおすすめだ。 でも少し心がふんわりやわらかくなりすぎて、最近では涙上戸になってしまったので少し困っているが、それもまた人生だなぁ。

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