街とその不確かな壁
村上 春樹
新潮社
2023年04月13日
概要
その街に行かなくてはならない。なにがあろうとー。高い壁と望楼、図書館の暗闇、古い夢、そして、きみの面影。村上春樹が、長く封印してきた“物語”の扉が、いま開かれる。
ステータス
読んだ
のぶさんの感想・評価
第一部 僕がなぜ影と離れ離れになって彼女の元へ向かったのか、前作では明らかにされず引っかかっていた点がすっきりした。それだけで読む価値があった。僕は街に来た時点で彼女のことを知っていたとは。前作の時点でそうだったのか、今作で新たに設定されたのか。 街に電気はない、という文が気になった。前作では発電所に行った気がするのに。 第二部 私は街の記憶を抱えつつも図書館司書としての生活を送る。小易さんの正体が明かされる場面はうまく理解し難かった。幽霊など非現実的な気はするが、国境の南、太陽の西に登場する彼女も幽霊のような存在だったのでそういうものだと受け入れる。私はあまり社交的な人物ではなさそうだが小易さんの存在を素直に受け入れ、先生のような存在として指導を受ける。意外と主人公はまともな人間なのだろう。イエローサブマリンの正体はよくわからないままだったが、第三部に繋げるためにそのような人物が必要だったのだろう。 コーヒーカップの彼女が性行為を望まない。心がない前作の彼女とのつながり? 最終章で16才の彼女と再会する。わたしたちは二人とも、誰かの影にすぎないのよ。もう16才の彼女に会うことはない。16才の彼女とのお話はこれで終わりなのか、結局のところなぜいなくなったのか解決はしていないが、全てに納得のいく結末があるとは限らないということか。 第三部 イエローサブマリンの少年と一つの存在になる。そのことで図書館司書の彼女に変化が現れるのは寂しい。前作今作を通して彼女に対して少なからず愛着を感じていたから。私は街から出たいと深層心理で望むようになる。なぜ。少年のせいか。私は街から出ることを決意する。街での私の存在は消え、街での私の物語は結末を迎えたということか。 街に行くというのはどういうことなのか。 前作との多少の違いもきになる。前作では楽器を探しに発電所へ行ったのに今作では、音楽のことを思い出しさえしなかった。 私と16才の彼女が作り出した街にイエローサブマリンの少年がやってくる。許可なしに。許可が降りないのは自分のものでないから? 前作、街は計算士の私の意識の中にあったものだが今作では、二人で作り上げている。同じ街? 続編ということで、計算士の私について書かれることも期待していたが一切触れられなかった。私の物語は車の中で眠りについた時点で終わり、ということなのだろう。 イエローサブマリンが街に来たのと、第二部の時間関係に不思議な点があるが、時間は意味を持たないから気にしないでいいのか。
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