満願
米澤 穂信
新潮社
2017年07月28日頃
概要
「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが……。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、「夜警」「関守」の全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。
ステータス
読んだ
メモ
◎煙たがられながら頼られることに慣れなければ、この仕事はやっていけない ◎利権や腐敗のでこぼこ道をコネとカネで平に均し、他社の妨害や地元の反発という障害物を丹念に排除し、鉄と油でガス田までの道を開く
ほわほわさんの感想・評価
人間の浅はかさ・本質的な汚さを不快感なく描いている。誰もがきっと無関係だと言い切れない心の濁りを様々な場面でリアリティを持って表現されている。 その罪というか客観的視点から見た重さの度合いに違いはあれど、保身や欲望、相手への侮蔑といった心に渦巻く感情が具体的な言葉は少ないながらに表されている。起点となる出来事や台詞が後出しだったり、別の登場人物から見ると全く異なる印象を与えるであろうという推測まで持てる、あえて幅を持たせた作品。 あくまで一人間の予想の範疇で終結しているもの、今後の展開を予期させるもの、それぞれに読者を飽きさせない創造の力を感じさせる。また人物像や情景の描写が丁寧で、その感覚をこの言葉で言い表すのかという“言い得て妙”の表現が多々あり、納得しつつ舌を巻いた。文章全体のバランスと言葉選びへのこだわりが垣間見えた気がする。自身の学びという観点からも、最新作である「Iの悲劇」含め他著書に手を伸ばしたいと思う。
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