人類の集積である都市がいかに理に適ったものであるかを説いた本。一言で言うと都市礼賛本である。 都市化は古くから多くの問題を生んできた。居住環境の悪化、経済格差の拡大などがその代表だ。しかし著者は、技術イノベーションや文化の発展など、人間社会における大きな前進は高密な都市から生まれてきたという事実を強調する。また、環境負荷の観点からも都市居住の方がエコであるとも。曰く、田舎で広い家に住んで毎日車で通勤するよりも、狭いマンションに住んで徒歩と電車で通勤する方が一人当たりのエネルギー消費量は低いのだと。まぁこれは事実そうだろう。 本書には具体的な政策提言はあまり書かれていないが、著者の基本スタンスとしては以下のようだ。「景観保全はほどほどにして再開発と高層化を進めよ」と「持ち家優遇政策をやめて都市集中を進めよ」だ。この著者の主張は経済合理性の観点からは正しいし、僕も著者の主張に概ね賛成だが、もう少し情緒的な面からの考察が欲しかった。 つまり、そうやって高層化・高密化したあとの都市は果たして個々人が気持ちよく暮らせる場所になっているのだろうか、という点だ。本書でも引用されるジェイン・ジェイコブスはかつて高層化に反対し、住民の相互監視が効く低層の都市を説いた。僕は「情緒的には」彼女の意見に賛成する。 結局のところ、そこには地価上昇を抑えようとする経済合理性と居住の快適さや安心感を求める情緒的感性とのトレードオフがある。そのどこかにバランス点が存在するはずで、それを政治の方針としてどこでバランスさせるかというのは結構重要な議論だと思う。残念ながら本書ではそこまで踏み込んで書かれていないので、もう少しこのテーマの本を読み進めたい。
元の読書記録を見る都市は人類最高の発明であるの感想・レビュー
エドワード・L.グレイザー/山形浩生
NTT出版
ISBN: 9784757142794
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