この本は関西国際空港がどのように関西空港株式会社の運営のもと、経営、コンセッションを経て今に至るのか、筆者の実体験に基づいて解説されている。いわゆる空港運営におけるマクロでソフトな解決策を時系列とともに解説しているものであった。 第1章から第3章までは空港の仕組みや空港が直面する課題や目指すべき目標などを関西国際空港と他の空港(仁川、成田、羽田など)と比較しながら解説しており、具体的でわかりやすかった。特に、アジアで有数のハブ空港である仁川空港のようにトランジット拠点としての空港を目指すべきではないかという私の今までの観念を日本全体で見た時は成田が既にそれを担っているため、全体の利益から見れば戦略的でないと真っ向から否定されたのが新鮮で新たな知見だった。 第4章から第6章にかけては実際に空港を1.2兆円の負債からどのように黒字化を実現してきたのかということが詳細に語られる。建設時の民活によりもたらされたこの負債に加え、着陸料や空港の不動産的側面である使用料の高さゆえの就航便数の低迷、国の「伊丹と同じように利用は増える」という楽観的な態度、インフルエンザ、SARSによる国際線低迷など負のスパイラルに陥りながらも関空・伊丹の統合民営化を元にコンセッションの相手方選定など関西エアポートとして2016年4月の空港運営開始に至るまでの経営改革が解説されていた。正直、PFIや投資など専門的というかあまりに詳しく語られていたので全体の体系的理解は1回読み通すだけでは難しかった。関西空港調査会主催のセミナーの公演内容がWeb上で公開されているので、その中から参考になる回のものを参照しながら、今後理解を深めていきたい(第17回研究会 加藤一誠氏『これからの空港・空港政策の方向性』などと本著の内容が部分的に一致)。 本著の「空港は誰が動かしているのか」という問いだが、空港によって運営主体が国か、自治体か民間(コンセッションなど)によってその契約内容が異なる為、一概に結論づけることはできないのではと考えていたが、筆者は民間であると結論づけていた。関空に至っては時代と共に、民営化が整えられ、健全な責任ある組織としての発展が期待できるようになった今日の運営主体である関西エアポートとという、公共性と民間活力を併せ持つ新たな枠組みでの組織こそが「自らリスクをとって新たな事業に踏み出せる勇敢な民間企業」として「うごかせる」という主体と言えるのだと感じた。 空港経営に限定された話ではなく、ビジネスでの経営改革について学びを求める人は読む価値がある一冊だと思う。
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轟木一博
日経BPM(日本経済新聞出版本部)
ISBN: 9784532263065
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