戦前戦中戦後を、食卓に並ぶ料理や菓子を通じて描いたエッセイ集。 湿度の高い文章だが文体はあっさりとしている。 人々の湿度や温度、戦前戦後の町の薄暗さ、夏場の耳鳴りのような蝉の声が聞こえるようだ。それらの光景の中で、著者はいつもうんざりしている。 特に著者へ性的な思いを持つ男達の息遣いは冷静に書いてある。 人間は呼吸をして生きている。湿度があり、温度が感じられて、少しずつ死臭の混じる息を吐きながら。若かろうが人間は死に歩みを進めながら生きている。呼吸を止めれば人間は死ぬ。 著者は食の思い出を通して、彼等の生きた証を残している。いつも何処かうんざりしながら。 それに引き換え、娘を描く文章はカラッとしたもので、一冊の中でもずっとじめじめした空気が続く訳でもなくバランスが良い。 書店の文庫フェアで手に取ったが思わぬ掘り出し物だった。一冊が薄いため読みやすい……と言いたい所だが、古い漢字が読めない人には難しいくだりもあるかもしれない。 あなたは読めますか、枇杷。
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武田百合子/野中ユリ
筑摩書房
ISBN: 9784480025463
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