表題作「対馬まで」を読んでみたくて、図書館で借りた(絶版のため)。 読み始めてすぐ、これはいいぞ、と思った。 文章が好み。 団鬼六のエッセイみたい。 3人の在日朝鮮人が、故郷を訪れることもできず(日本人は行けるのに!)、対馬まで行き、海の向こうの釜山を見たときの描写、表現がすばらしかった。私が浅く感想を言うことを許されないような気がするが、そこにいるかのように感じた。 日本に対する思い、分断された祖国に対する思い。 よるべなさ。 また、「備忘録」では、全連(在日朝鮮民主全連合)の組織との軋轢が描かれている。著者は「私たち在日朝鮮人にとって、組織の全連とは、日本にある祖国のようなものだった」と書く。その全連に表現の自由を制限され、講演などを邪魔されるというやるせない出来事の一部始終が書いてあった。 登場人物のひとり、シン・ソクドル(強制徴用され、福島の炭鉱で働き、焼き肉屋を営むまでになった人物)のハッとさせられる、大らかな発言や人柄が描かれていないと、ただの恨み節だけど、彼がいることで全く別の広がりを感じられる随筆だった。
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金達寿
河出書房新社
ISBN: 9784309001982
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