本の感想・レビュー
岬

岬の感想・レビュー

中上 健次

文藝春秋

ISBN: 9784167207014

読者の感想・読書記録

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くっぴさん

8/6/2026読了 1976年芥川賞受賞作品『岬』他3作の短編集 『黄金比の朝』 東京で浪人をしている主人公 同じアパートに住む同じく浪人生の斉藤 ある日兄が突然アパートの部屋に現れた 兄は左翼の活動をしており警察から逃げてきたようだ。 ある日喫茶店で出会った若い女(水商売)が生き別れた兄妹の消息を知りたいと週刊誌で見たよく当たる占い師を探しているといい、兄、斉藤と共に一日中探すが、すでに亡くなっていた。 女のことを自分の母と重ね合わせて蔑んだ目で見ていたが、兄は優しく寄り添う。 次の日の朝、とても清々しく心地よい自分がいた。 『火宅』 ある体の大きな男が博打、火付けなどの悪事をしており、その男に懐いた主人公の兄が自分の家に男を引き入れ、母を妊娠させて主人公が生まれる。 彼(主人公)が生まれる前に警察に捕まった男が彼が3歳の頃に戻ってきてよりを戻したいと言ったが母も彼も拒否する。 その後、彼は何度かその男が遠巻きに自分を見ていることに気づく。 大人になった彼は母から連絡があり、あの男がオートバイで切り株にぶつかり死にかけてていると知らされる。 彼は仕事が長続きせず、酒を飲んでは自分の妻に暴力を振るう。 自分の中にあの男の血が流れていることに苛立ち苦しんでいる。 とにかく最初は何の事か誰が誰なのか全く分からず困難だった。 口コミを読んで登場人物を理解してから再度読んでようやく理解できた。 『浄徳寺ツアー』 ツアーコンダクターの男が老人や白痴の女の子と父親などのツアー客、お寺の和尚、それに愛人の女性。男の妻はこのツアー中に出産予定だか、男は立ち合いを断り添乗の仕事に行っている。すでに4回も中絶させている。 とにかくひどい男で客のことは馬鹿にしていて、夜に愛人との逢瀬だけを楽しみにしているという話。 若さゆえの欲望が抑えられないというのがテーマなのか? この話の中でも急にわからない描写が出てきて混乱した。 『岬』 主人公(24歳土木作業員男性)は複雑な家庭環境に育ち、本当の父親に憎んでおり、反面教師で博打や女遊びは敢えて遠ざけた生活をしてる。 24歳で自死した兄は自分を捨てて彼だけを連れて再婚した母と彼を恨んで殺そうと乗り込んできたことがありトラウマになっている。 また彼には異母妹がいて、風俗業を営む母の店で働いていることを知り会いに行くが向こうは全く知らない様子で誘ってくる。 同じ作業仲間内で殺傷事件があり、元々身体の弱い姉が病気になって精神まで病んでしまったり、日常が崩壊していき、怒りの矛先が父親へと向く。 最後は異母妹のところへ行き父への憎しみを晴らすように交わるという話。 とにかく閉塞感の強い作品だが4作の中では一番わかりやすく良かった。 どうやらこの作品は中上健次自身の生い立ちがベースにあるようだ。 火宅も同じ家庭環境が描かれていたので、かなり私小説に近いものなのかもしれない。 続編として『枯木灘』『地の果て 至上の時』があり三部作と言われているとのことなので是非読んでみたい。

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