Tーch凍りのくじら
凍りのくじら

凍りのくじら

辻村 深月

講談社

2008年11月

概要

藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う一人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすときー。

ステータス

読んだ

Tーchさんの感想・評価

小説の内容には期待しておらず、ここではない どこか別の世界に連れてってほしいと願って読み始めただけだったはずのに、想像以上の面白さについつい一気読みしてしまいました。 「本当に大切なものがなくなって、どうしようもなく、後悔して、その時、私は耐えることができるだろうか」 主人公は少し冷めてるドラえもん好きな高校生の女の子。危うく、脆く、繊細でそれを取り繕うために達観してるように見せている。それは凍りの中に閉じ込められたクジラと何ら変わらない。達観するフリをして、人をカテゴライズすることで自分は人と違うと酔い、現実の世界でうまく息を出来ずに彼女が作る仮初の世界で生きている。 そんな主人公が自分の置かれた状況を理解し、小説の中で起こるようなことと比べたらちっぽけな事かもしれないけど、現実世界であれば十分大変な出来事を乗り越えて一歩ずつ前に進んでいく。傲慢さも冷淡さも孤独も甘えも自覚できていたけどどうしようも出来なかった主人公がそれでも人に頼り少しずつ自分を見つけていく姿を、安っぽい煽り文句みたいになってしまいますが涙なしには読めませんでした。 好き嫌いは割とはっきりする作品だとは思いますが、僕の場合はそれが良い方向に振り切ってくれました。現在進行形で主人公と自分の影が重なる部分もあり、それによって感情移入が出来たことも良かったポイントだったと思います。主人公が乗り越えたように僕も乗り越えなきゃいけない日が来るよなと未だ他人事のように、それでも強い実感を持つことが出来ました。 また、文字通り何もかもが毎日変化する僕の今の環境に精神がかなり削られており、それを回復する術も現状は持ち合わせていないと思っていましたが、この小説がそれを癒してくれました。小説の世界に入り込んでその世界で一度生きる事で、現実世界の僕も一度リセットされた感覚があります。 小説ってすごい!! ちなみに僕は、「少し・不整」かなと自分のことを思います。 【追記】 読み方の押し付けはしたくないので参考程度に留めて欲しいのですが、最後にこんなどんでん返しが!!的な文脈で読むと凡作に成り下がってしまう気がしまうので、あくまで主人公の成長物語として読むのが良いんじゃないかなって思います。

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