櫻井斜陽 他一篇
斜陽 他一篇

斜陽 他一篇

太宰 治

岩波書店

1988年05月16日頃

概要

敗戦直後の没落貴族の家庭にあって、恋と革命に生きようとする娘かず子、「最後の貴婦人」の気品をたもつ母、破滅にむかって突き進む弟直治。滅びゆくものの哀しくも美しい姿を描いた『斜陽』は、昭和22年発表されるや爆発的人気を呼び、「斜陽族」という言葉さえ生み出した。同時期の短篇『おさん』を併収。

ステータス

読んだ

櫻井さんの感想・評価

「恋と革命」 まず、「恋」に関しては、主人公・かず子が経験する恋は、単なる恋愛感情にとどまらない。彼女が上原に抱く想いは、世間の道徳や常識を超えた、一種の狂気とも言える。特に、上原が世間的に堕落した人物として描かれているにもかかわらず、かず子は彼に真剣な愛を注ぐ。この姿勢は、女性の純愛というよりは、女性自身が主体的に生き方を選び取ろうとする意志の現れであり、旧来の恋愛観からの逸脱であると思った。このような恋の描き方には、太宰治自身の恋愛観が強く投影されており、恋愛を通して生きる意味を問い直すという試みがなされている。 次に、「革命」という視点から見ると、本作には明確な政治的革命は描かれていないため、考えてみたところ旧来の概念を覆す(壊す)というものなのかなと思った。斜陽には個人の精神的革命が見られる。かず子は「新しい女」として古い価値観に抗い、自己の存在を確立しようとする。その姿勢は、貴族という階級制度が崩れゆく中で、新しい生き方を模索する象徴。自分がもしカズコの立場に立った時、貴族という立場でそれ相応の人と結婚し決められた生活をする。そんなものは絶対嫌で自己の欲望を優先してまでも古い道徳に逆らいたいと思うだろう。 また、母の死や弟・直治の破滅を経て、かず子が最後に示す「子を産み、新しい時代を生きる」という決意は、ある種の人間的革命の到達点であると思った。 社会が変わっていく中で、個人もまた変わらなければならないというメッセージが込められている現代に通ずるあまねくテーマなのだと感じた。

この本を読んだ人の感想

「斜陽 他一篇」の感想・レビューをもっと見る

ショップ

Amazon楽天

コメント

かず子には、上原が世間的に落ちぶれた男性だったからこそ魅力的に見えたのだと思った。女性は男性がダメであればあるほどのめり込み、魅力的に映り、母性が湧き...これを男性である太宰がこんなにもロマンティックに書けることがこの作品の魅力だと感じた。そんなダメ男にのめり込んでいるかず子が、精神的革命を起こした上での「人間は恋と革命のために生まれてきた」この言葉。自分の好きな人を愛し、愛し合った結果である子供を欲し、自分の好きなように生きる。崩れかかった階級制度の中でかず子が起こした革命は、「女性が自由に生きる」という革命だったのだと思った。

はるのコンテンツをアプリでチェックしましょう

櫻井

あなたの感想も、読書仲間へ

ブックミーで読んだ本を記録して、感想を共有できます。

櫻井のコンテンツをアプリでチェックしましょう