薄雪また、同じ夢を見ていた
また、同じ夢を見ていた

また、同じ夢を見ていた

住野よる

双葉社

2018年07月12日頃

概要

250万部を超える大ベストセラー青春小説「君の膵臓をたべたい」。その著者、住野よるの第二作目が、待望の文庫化。友達のいない少女、リストカットを繰り返す女子高生、アバズレと罵られる女性、一人静かに余生をおくる老女。彼女たちの“幸せ”は、どこにあるのか。「やり直したい」ことがある、“今”がうまくいかない全ての人たちに贈る物語。

ステータス

読んだ

薄雪さんの感想・評価

住野よるさんの『また、同じ夢を見ていた』です 実は、ミステリー仕立てのけっこう解釈のしがいがある作品になっています。 第1章では、小学5年生の小柳奈ノ花の日常が描かれます。彼女は非常に賢く、「人生とは〇〇のようなもの」と語る癖がありますが、その大人びた態度と他者を見下す姿勢から学校では孤立しています。放課後は図書館に寄り、家に帰っても両親は仕事で不在で、孤独な生活が続いています。 第2章では、怪我をした黒猫を助けてもらうためにアパートを訪ね歩いた奈ノ花が、アバズレさんと出会います。表札の落書きを名前だと誤解して呼びますが、彼女は否定せず受け入れます。奈ノ花は彼女の部屋でお菓子を食べ、自由奔放な彼女の人生観に触れていきます。 第3章では、別の家をノックしたことでおばあちゃんと出会います。おばあちゃんはマドレーヌを焼き、本を勧め、奈ノ花に「先を見る力がある」と語ります。大人は過去を見る生き物だと示唆し、部屋には「live me」とサインされた絵が飾られています。 第4章では、奈ノ花がいつもと違う道を歩いたことで、廃墟の屋上でリストカットの跡を持つ女子高生・南さんと出会います。南さんは小説を書いており、奈ノ花はその作品を読む約束をします。ここから奈ノ花は三人の女性のもとを順番に訪れる日々を送るようになります。 第5章では、国語の授業で「幸せとは何か?」を考える課題が始まり、奈ノ花は三人に相談しながら答えを探します。しかし授業参観で中間発表をすることになった際、両親が来られないと知って激怒し、家族と衝突します。 第6章では、奈ノ花が南さんの小説を読み深く感動します。両親と喧嘩したことを話すと、南さんは「仲直りしろ」と強く迫ります。南さん自身が両親と喧嘩したまま事故で亡くした後悔を抱えていることを語り、奈ノ花は両親と仲直りする決意を固めます。 第7章では、授業参観当日、両親は仕事を切り上げて来てくれます。奈ノ花は「幸せとは、ここにお父さんとお母さんがいてくれること」と発表します。その後、南さんと会っていた廃墟が取り壊され、南さんは姿を消します。 第8章では、桐生くんの父が万引き犯と疑われたことで桐生くんがいじめられ、奈ノ花は彼をかばいます。しかし桐生くん自身から拒絶され、クラスでも無視されるようになり、奈ノ花は泣きながらアバズレさんの家へ向かいます。 第9章では、アバズレさんが「同じ夢を見る」と語り、その夢の少女が奈ノ花と特徴が一致していることが明かされます。奈ノ花は夢の少女がアバズレさん自身であり、つまり未来の自分であると気づきます。また、奈ノ花が名前を教えていないのにアバズレさんが知っていたことにも違和感を覚えます。 第10章では、奈ノ花が桐生くんの家を訪れ謝罪し、再び「幸せ」を一緒に考えようと誘います。桐生くんは学校に行く決意をし、二人で登校します。その後アバズレさんの家を訪ねると、四年前から別の人が住んでいると言われ、奈ノ花は現実とのズレに混乱します。 第11章では、奈ノ花がおばあちゃんに南さんもアバズレさんも消えたことを話します。おばあちゃんは「また会えると確信しているから寂しくないのだろう」と語り、奈ノ花は三人が“もし間違った選択をした場合の未来の自分”であることを理解し始めます。 最終章では、奈ノ花が正しい選択を積み重ねたことで三人の未来像は消え、未来の奈ノ花は作家となり、桐生くんと共に生きているところが描かれます。2人がこれからどうなったのかというところは、「薔薇の下で」という言葉で締め括られます。 さて、『また、同じ夢を見ていた』というのはどういう意味なんでしょうね。 まず、未来の自分たちが同じ“奈ノ花だった頃の夢”を見ていたからです。アバズレさん・南さん・おばあちゃんは、奈ノ花の“もしもの未来”。 3人はみんな、奈ノ花だった頃の記憶=同じ夢を共有しています。 そして、②奈ノ花自身も、未来の自分たちと同じ“未来の夢”を見ていたから。奈ノ花は3人を通して、間違った未来の姿を何度も“夢のように”見ています。 そして、人間にとって幸せを探す過程が、同じ問いを何度も繰り返す“夢の反復”だからでしょうか?奈ノ花は「幸せとは何か」を何度も考え直し、反復しています。その成長のプロセス自体が“同じ夢を見ている”ような構造になっているような気がします。 人は可能性があるにしろ、ないにしろ、同じ夢を何度も度も見てしまう生き物ですから…。

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