薄雪砂漠
砂漠

砂漠

伊坂 幸太郎

実業之日本社

2017年10月04日頃

概要

この一冊で世界が変わる、かもしれない。 実業之日本社創業120周年記念! 小社文庫限定の書き下ろしあとがき収録。 仙台市の大学に進学した春、なにごとにもさめた青年の北村は四人の学生と知り合った。 少し軽薄な鳥井、不思議な力が使える南、とびきり美人の東堂、極端に熱くまっすぐな西嶋。 麻雀に勤(いそ)しみ合コンに励み、犯罪者だって追いかける。 一瞬で過ぎる日常は、光と痛みと、小さな奇跡で出来ていたーー。 明日の自分が愛おしくなる、一生モノの物語。

ステータス

読んだ

薄雪さんの感想・評価

仙台市の国立大学に入学した主人公・北村は、軽薄なプレイボーイの鳥井、超能力を持つ南、大学一の美女の東堂、パンクロック好きで熱血漢の西嶋という個性豊かな4人と出会います。鳥井が「東西南北の苗字を持つ仲間を集めたい」と言って麻雀に誘ったことをきっかけに、5人の交流が始まります。 日常は大学生らしいボウリング勝負、合コン(長谷川藍子ら短大生を相手にしたもの)、アルバイト、学園祭、音楽(パンクロック談義)などで彩られています。一方で、非日常的な事件も次々と起こります。 仙台の街では「プレジデントマン」と呼ばれる通り魔が出没します。中年男性に「大統領か?」と問いかけては殴る人物で、街の噂になっています。また、南が本物のサイコキネシス(念力)を持つことが明らかになり、超能力を巡る対決も繰り広げられます。 やがて、グループの盛り上げ役だった鳥井が、ホストの礼一が所属する空き巣グループとのいざこざに巻き込まれます。そして、左腕を失うという衝撃的な事件が起こります。仲間たちは深く傷つきますが、互いに支え合いながら、鳥井も少しずつ立ち直っていきます。 大学生活が進むにつれ、5人の関係にも変化が生じます。鳥井は南と恋人関係になります。北村は鳩麦という女性と付き合い始めます。東堂は西嶋に惹かれていきます。 物語の中では、さまざまなエピソードが描かれます。 ・捨てられた犬の救出 殺処分寸前だったシェパードを助けるエピソードです。このとき西嶋は「助けちゃえばいいんですよ」と言います。 ・超能力対決 南の超能力(テレキネシスのような力で車を飛ばすなど)が本格的に発揮されます。超能力否定派の麻生晃一郎や、自称超能力者の鷲尾との対決や論争も描かれます。 ・ホスト軍団(礼一・純ら)との衝突と決着 南の超能力を利用して再び空き巣を行おうとしたホストの礼一たちの犯罪グループを、仲間たちは協力して捕まえます。 大学の4年間はあっという間に過ぎ、5人は卒業を迎えます。就職、進学、地元への帰郷など、それぞれが異なる道へ進んでいきます。しかし、彼らが共に過ごした時間は確かに存在していました。物語は、北村が「砂漠」にたとえられる社会へ踏み出す場面で締めくくられます。北村は「いずれ仲間の記憶も薄れ、ばらばらになるかもしれない」と思いながらも、胸の中で静かに呟きます。 ――「なんてことはまるでない、はずだ」と。 社会という「砂漠」に踏み出す前の、かけがえのない時間――それはまるでオアシスのようなものです。作品は、その時間を爽快感と一抹の寂しさとともに描いた青春小説です。西嶋はこう言います 「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」 青春小説ですし、なんて人間讃歌なんでしょうね。 伊坂幸太郎さんの小説、まだまだ本数は読んでいないのですが今まで読んだ中で一番心に刺さりました。心が苦しくなるくらい。 こんなにキラキラした若い感性を、私はどこにおいてきてしまったんだろう。

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