くるり駅でさよならを 白黒ねこと夕暮れの町
高橋由太
ハーパーコリンズ・ジャパン
2025年07月15日頃
概要
千葉県内を走るローカル線、久留里線。その車内にはときどき、白黒の猫が乗っている。猫が降りるのは、路線図には載っていない「くるり駅」。誘われるように猫についていくと、改札を抜けた先にあるどこか懐かしい町に、もう二度と会えないはずの大切な人が待っていて…。初恋の人、最愛の母親、大好きな飼い主ー悲しい別れから立ち直れずにいる主人公たちの心の再生を描く、連作短編集。
ステータス
読んだ
薄雪さんの感想・評価
髙橋由太さんの『くるり駅でさよならを』。 私の地元が舞台ということで読んでみました。 連作短編集になっています。 第1話「あの日のウエディングベル」 沙都美は両親を相次いで亡くし、無気力な日々を送っています。同窓会で高校時代に好きだった亮介と偶然再会しますが、彼は重い病に侵されており、再会後まもなく亡くなってしまいます。深い喪失感の中、ふと乗った久留里線で白黒猫を見つけ、後を追うと「くるり駅」にたどり着きます。 そこで亮介と“もう一度だけ”過ごす時間を得ますが、やがて別れの時が訪れます。沙都美は元の世界へ戻り、前へ進もうと決意します。 ⸻ 第2話「海が聞こえる」 海渡はミュージシャンを目指していた若者ですが、飲酒運転により人を轢いてしまいます。出所後、自分を一人で育ててくれた母も失意のうちに亡くなっていたことを知り、深く落ち込みます。 木更津駅から久留里線に乗ると、白黒猫に導かれて謎の「くるりの街」にたどり着きます。そこで母と再会し、穏やかな時間を過ごしますが、自分が轢いてしまった人の家族が悲惨な状況に置かれている現実を知ります。 海渡は元の世界に戻り、自分の罪と向き合い、なすべきことを果たそうと決意します ⸻ 第3話「あした、くるり」 小学生の想と心桜は仲の良い友だちでしたが、心桜は事故で亡くなってしまいます。ある日、想が気づくと列車に乗っており、白黒猫に導かれて「くるりの街」に降り立ちます。 そこで想は、自分が心桜をかばって事故に遭い、すでに亡くなっていることを思い出します。心桜は感謝の気持ちを伝えるために、この場所まで訪れていたのです。 ⸻ 第4話「ミケコの物語」 猫のミケコはタダシに拾われ、大切に育てられて幸せに暮らしていました。タダシは離婚しており、娘のハルとは一緒に暮らせませんでしたが、ハルが訪ねてくる時間を楽しみにしていました。 しかし、やがてハルの母が再婚し、ハルはタダシのもとに来られなくなります。孤独からアルコールに依存したタダシは病で亡くなってしまいます。 ミケコはハルの家で暮らすことを拒み、やがて「くるりの街」にたどり着きます。そこでタダシと再会し、最終的にハルとともに生きることを選びます。なお、ハルは心桜と同一人物です。 ⸻ 第5話「さよならをするために」 久三子は容姿に恵まれているわけではありませんが、徹に求愛されて結婚し、息子の賢太を授かります。幸せな日々を送っていましたが、賢太は海で行方不明になってしまいます。 二人で長い間探し続けますが見つからず、やがて久三子は精神的に追い詰められ、徹を責めてしまいます。その後、徹も姿を消してしまいます。 白黒猫に導かれて久三子も「くるりの街」にたどり着きますが、二人に再会することはできません。この場所は“さよならをするための街”だったのです。 いつか再び会える日を願いながら、久三子は団子を焼き続けています。 どの話も別れと再生を謳っているようです。 内房の少し寂れた世界観とマッチしているような気がします。どの話もしんみりしちゃいますね…。
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