薄雪少年と犬
少年と犬

少年と犬

馳 星周

文藝春秋

2023年04月05日

概要

傷つき悩み、惑う人々に寄り添っていたのは一匹の犬だったー。2011年秋、仙台。震災で職を失い、家族のため犯罪に手を染めた男。偶然拾った犬が男の守り神になった(男と犬)。壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいた(夫婦と犬)。人と犬の種を超えた深い絆を描く感涙作。第163回直木賞受賞

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メモ

男と犬 3.11の被害の半年後、職を失い、仙台の街で運び屋をしていた中垣和正。立ち寄ったコンビニで不思議な犬に出会い、飼うことにする。首輪には多聞と書かれている。宝石窃盗団の逃走の手伝いをすることになるが、多聞がいると心強いことから、彼を守り神と呼ぶことに。和正の老いた母や姉も多聞と知り合い、幸せを感じる。ところで必ず多聞は、南の方向を気にしている。訪ね人がいるようだ。 次を最後の仕事にしようとしていたが、窃盗団の斡旋側に裏切り者が出て、逃走に失敗する。また、窃盗団の一味であ…

男と犬 3.11の被害の半年後、職を失い、仙台の街で運び屋をしていた中垣和正。立ち寄ったコンビニで不思議な犬に出会い、飼うことにする。首輪には多聞と書かれている。宝石窃盗団の逃走の手伝いをすることになるが、多聞がいると心強いことから、彼を守り神と呼ぶことに。和正の老いた母や姉も多聞と知り合い、幸せを感じる。ところで必ず多聞は、南の方向を気にしている。訪ね人がいるようだ。 次を最後の仕事にしようとしていたが、窃盗団の斡旋側に裏切り者が出て、逃走に失敗する。また、窃盗団の一味であるミゲルは、多聞をさらって逃走する。 泥棒と犬 フィリピン人であるミゲルは、ゴミ山育ちであった。日本で窃盗をして金を貯めていたため、その金と多聞を連れて、国外に出ようとする。幼い頃はショーグンという犬と友人になっており、ゴミ山で命を落とそうとした際に、ショーグンに何度も命を救われていた。イラン人のハーミにも助けられて、新潟にたどり着く。しかし、必ず特定の方向を気にしている多聞には、誰か仲間がいるのだろうと推測する。新潟で多聞を離してやり、解放したミゲルは守り神を失い、そこで命を落とす。 夫婦と犬 中山大貴と紗英は夫婦。ある日、大貴はトレイルランの練習中に、犬に出会う。犬はどうやら大貴が熊に出会う前に追い払ってくれたようだ。犬を連れて帰る大貴。 妻の紗英は自宅で自然野菜の栽培と出荷などの仕事を営んでいた。大貴は手伝ってくれず、アウトドアグッズの専門店を営むが金にはならない。紗英ばかり家事と仕事の負担が嵩み、不満がたまっていた。しかし、紗英は犬を飼うことで幼い頃の気持ちを思い出し、癒されていた。犬を紗英はクリントと呼び、大貴はトンバと呼ぶほど2人は掛け違っていた。ある日、大貴は散歩がてらトレイルランに出かけ、命を落とす。 犬は再び旅立ち、紗英は新しい犬を飼うことにする。また新しい群れをつくるのだ。 少女と犬 事故で片足と両親をうしなった瑠衣は,東尋坊から飛び降りて死のうとしていた。しかし、そこで犬に出会う。幼き頃に飼っていたマックスを思い出し、とても犬が気になるようになる。またそこで自殺志願者の支援ボランティアをしていた武に出会う。犬にはマックスという名前をつける。 マックスのおかげで立ち直った瑠衣。リバビリに励み、義足もつけ、前を向いてくらせるように。 川を流されていた子犬を助け、そして風と名付け、飼うことした。瑠衣が立ち直ったのを見て、旅立つマックス。 娼婦と犬 美羽は山からの帰り道、怪我した犬を拾い、獣医に連れていく。その場で、マイクロチップから多聞という名前であることを知る。美羽は犬をレオと犬を呼び、飼うことにする。 美羽は娼婦だった。美羽は男に入れ込み、娼婦となってまで貢いでいた。レオに癒される美羽。しかし、男は浮気をしており、気持ちが切れた美羽は男を殺してしまう。その死体の処理の帰り道で美羽はレオを拾ったのだった。男の友人は事態を嗅ぎつけ、美羽を脅迫する。 美羽は自首することにし、その前に多聞を自由にしてあげる。 老人と犬 老いた狩人弥一は、家のを庭に迷い込んだ犬を拾い、ノリツネと名付ける。弥一は狩りの名人であったが膵臓癌に冒されていた。かつて妻も膵臓癌で亡くしていた。妻への贖罪の気持ちも兼ねて、自宅で延命治療もせず、亡くなろうとする弥一。弥一が主人を探しにいく旅の途中であることを勘づきながら、余生を共に過ごそうとする。 しかし村は熊に襲われ、困っていただ 。最後の力を振り絞り、熊を撃とうとする。しかし、弥一他の狩人に誤って撃たれる。 少年と犬 内村徹、久子の夫婦は東日本大震災の後、熊本に移り住んできていた。一人息子の光は、震災のショックで感情を失い、喋ることもなくなっていた。しかし、徹が犬を拾って帰ると、笑顔になり、感情を表現するように。ふたたび笑顔を取り戻す内村一家。 徹がかつての友人に連絡を取り、犬の写真を送ると驚きの事実がわかる。犬は、かつて震災前に光とよく公園で遊んでいた犬だった。名前は多聞という。多聞は震災で主人を失い、慕っていた光を探して、東北から熊本まで旅をしてきたのだ。 しかし、内村家をまた災害が襲う。熊本大震災だ。多聞は光を庇って死んでしまう。死んだという事実を勇を奮って光に伝える徹と久子。 光は大丈夫だと言う。なぜならいつも多聞が傍にいるからだと。

薄雪さんの感想・評価

馳星周の直木賞受賞作。 馳星周というと不夜城の影響からノワール作家としてのイメージが強すぎるのですが、この作品は少し毛色が違います。 多聞という不思議な犬が、旅する過程でいろんな人に出会い、そこで紡がれる話を連作短編集として仕立てています。 男と犬 3.11の被害の半年後、職を失い、仙台の街で運び屋をしていた中垣和正。立ち寄ったコンビニで不思議な犬に出会い、飼うことにする。犬の首輪には多聞という名前が書かれていた。 泥棒と犬 フィリピン人であるミゲルは、ゴミ山育ちであった。日本で窃盗をして金を貯めていた。手配人に裏切られ、金を持って逃げ出す際に、守り神として多聞を連れていこうとする。 夫婦と犬 中山大貴と紗英は夫婦。ある日、大貴はトレイルランの練習中に、犬に出会う。犬はどうやら大貴が熊に出会う前に追い払ってくれたようだ。犬を連れて帰る大貴。家では彼に不満をためた紗英が待っている。 少女と犬 事故で片足と両親をうしなった瑠衣は,東尋坊から飛び降りて死のうとしていた。しかし、そこで犬に出会う。幼き頃に飼っていたマックスを思い出し、飛び込みを思い止める。 娼婦と犬 娼婦の美羽は山からの帰り道、怪我した犬を拾い、獣医に連れていく。その場で、マイクロチップから多聞という名前であることを知る。美羽は犬をレオと犬を呼び、飼うことにする。 老人と犬 老いた狩人弥一は、家の庭に迷い込んだ犬を拾い、ノリツネと名付ける。弥一は狩りの名人であったが膵臓癌に冒されていた。亡き妻への贖罪の気持ちも兼ねて、自宅で延命治療もせず、亡くなろうとする弥一。ノリツネか主人を探しにいく旅の途中であることを勘づきながら、余生を共に過ごそうとする。 少年と犬 内村徹、久子の夫婦は東日本大震災の後、熊本に移り住んできていた。一人息子の光は、震災のショックで感情を失い、喋ることもなくなっていた。しかし、徹が犬を拾って帰ると、笑顔になり、感情を表現するように。笑顔を取り戻す内村一家。徹がかつての友人に連絡を取り、犬の写真を送ると驚きの事実がわかる… 各短編を通じて、必ず登場するのは多聞だけです。多聞から見たロードムービーのようにも作品は見えます。多聞を通じて、各作品の主人公たちは、自分の人生を振り返ったり、次に一歩を歩み出す勇気を得ています。7編の短編全ての語り手が、いずれも過去に犬と親しんだ経験を持っていて、犬は彼らが幸せだった時のシンボルになってるいる感じがしました。 犬を通じて読者に人生を顧みさせる、そんな経験をさせてくれる小説だと思います。 少女と犬や、少年と犬の短編のように、感動的な話で全てを綴っても良いはずなのに、泥棒と犬や娼婦と犬のようなノワール的な作品をいれてくるあたりに、馳星周らしさを感じて仕方ありません。 25年3月に映画も公開するようなので見てみたいと思います。 にしても、犬を使って泣かせるのは反則だよねぇ笑

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