幻夜
東野 圭吾
集英社
2007年03月
概要
幻の夜を行く男と女。息もつかせぬ傑作長編! 阪神淡路大震災の直後に、出会った男と女。男が犯した殺人を知る女は、彼を徹底的に利用し、野心を実現していく。だが彼女にも恐るべき秘密がーー。名作『白夜行』の興奮が再び!(解説/黒川博行)
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メモ
第1章 雅也は父の葬儀を執り行っていた。通夜の場に来て、借金の返済を催促する叔父の俊郎を阪神淡路大震災のどさくさに紛れて主人公の雅也は、つい殺してしまう。しかし、そこを新海美冬に目撃され、また見知らぬカメラマンにも撮影されてしまう。お前が殺したのだろうと、俊郎の娘の夫婦に追及される。しかし、美冬はカメラマンから録画ビデオを取り上げ、一緒に東京に行こうと雅也に告げる。2人は行動を共にすることになる。 第2章 新海美冬は、東京の銀座の宝飾屋「華屋」で働いていた。同僚の畑山彰子は…
第1章 雅也は父の葬儀を執り行っていた。通夜の場に来て、借金の返済を催促する叔父の俊郎を阪神淡路大震災のどさくさに紛れて主人公の雅也は、つい殺してしまう。しかし、そこを新海美冬に目撃され、また見知らぬカメラマンにも撮影されてしまう。お前が殺したのだろうと、俊郎の娘の夫婦に追及される。しかし、美冬はカメラマンから録画ビデオを取り上げ、一緒に東京に行こうと雅也に告げる。2人は行動を共にすることになる。 第2章 新海美冬は、東京の銀座の宝飾屋「華屋」で働いていた。同僚の畑山彰子は不審な人物にストーカーを受けているという。職場の皆に相談してみたところ、美冬も含めて、女性陣みんながストーカー被害にあっていることがわかった。そんなとき、華屋の店中に紙袋に収められた塩素系の化学薬品が置かれた。サリン事件を想起して、皆が逃げたす。向井と加藤の2人の刑事が事件を取り調べることになった。ストーカーとの関連性調査のため、華屋の女性スタッフ皆をガードする警察。そんな中、新海美冬の部屋の郵便物を盗み取ろうとする男がいた。華屋のフロア長の浜中洋介だった。取り調べの中、美冬と付き合っていると主張する浜中。しかし美冬には否定されて、ガス事件の犯人として取り扱われていく。 第3章 雅也は、千住大橋近くのフクタ工業はに雇われて金属加工業に従事していた。雅也が優秀なあまり、社長の福田は長い付き合いの前村と中川をクビにしようとする。世間はバブル崩壊後の不景気に突入していた。また、新海美冬は、美容師の青江新一郎を誘惑して独立させ、一旗あげようとする。美冬は、雅也と付き合いながらも自分の中に射精はさせず、雅也を支配しようとする。 美冬はフクタ工業の社員であった安浦をホテルに連れ込み、薬を嗅がせ、右手を使い物にならなくした。代わりに社員となった雅也は安浦に恨まれ、襲撃されそうになるが、雅也は安浦を許す。 第4章 曽我孝道は神戸の西宮で人を探していた。仕事でお世話になった新海武雄、澄子夫妻の娘の美冬である。三人が写った写真をもっているからだ。夫妻の家は、水原鉄工所の近くにあったが、いまはアパートのコンクリート部分しか残っていない。アパートの管理人から、長女の連絡先を教えてもらう。尋ねた先の隣人から、新海美冬の居候先の住所の幡ヶ谷を教えてもらう。 一方、新海美冬は青江新一郎を籠絡して、美容院を任せ、業績を拡大していた。ある日、雅也の元に写真が送られてくる。雅也がまさに叔父の俊郎を殺そうとするタイミングの写真だ。美冬は、その写真の送り主を誘い出し、雅也と所在を確かめる。送り主の名前は曽我孝道だという。 そして曽我は行方不明になる。 第5章 新海美冬は、指輪のサンプルをいくつか作ることで華屋の社長秋村隆治に売り込む。そして、自分のブランドに協力させることに成功する。指輪は雅也が仕上げたものだった。また、美冬は秋村に自分にプロポーズさせることにも成功する。雅也は居酒屋の看板娘有子と仲良くなるが、彼女の持ってきた刺身を食べて吐いてしまう。一方、曽我の行方不明の事件の調査は、刑事の加藤が担当することになっていた。加藤は、華屋の事件と曽我の事件において、美冬の名前が上がることから、美冬を訝しむ。加藤は美冬に接触するがたいした情報は得られない。ただ、事件の経緯から曽我の失踪には美冬が絡んでいると睨む。また、華屋のアクセサリーの造形から、美冬の知り合いに腕の良い金属加工職人がいることを知る。 第6章 不景気から雅也はフクタ興行をクビになる。また、雅也は秋村と結婚しようとする美冬を問い詰めるが、雅也と美冬2人のためだと美冬は言い張る。生肉を喰わせて、雅也を曽我殺害のトラウマから解放しようとする。その上で、秋村との結婚に納得の行かない青江に対する計略を実行させようとする。 青江は美冬の会社から独立しようとする。 青江のところで働く美容師見習いの中野亜美が夜、帰宅時に何者かに襲われる。そしてその場所にはなぜが青江が持っていたものと同じペンダントが落ちている。警察に疑われる青江。美冬はなんとかしてみるという。3日経ち、美冬の言われるままに、あるレストランを訪れる青江。そこには、青江のペンダントが落とし物として預けられていた。これで青江の容疑は晴れ、青江はそれを恩義に感じ、美冬からの独立を取りやめる。 第7章 華屋を辞めさせられた浜中は、小さい宝石店で働いていた。そこに刑事の加藤が訪れてくる。浜中について美冬のことを問い出す。誰かに罠に嵌められたのではないかと、美冬の過去を知っているかと、ガス発生装置はあまりにも手が混んでいて、浜中にはつくれないのではないかと。また、加藤は美冬が秋村と結婚したことを浜中に知らせる。浜中は、以前美冬と付き合っていた際に美冬に指輪のデザインを教えた事を思い出す。秋村社長に美冬が見せた指輪は、浜中から仕込んだデザインの盗作であった。 浜中は美冬のところに乗り込むも、シラを切られ、逆に職を失うような脅迫を受け、諦める。 第8章 美冬は、秋村家での地位を固めていくが、義姉の頼江はその出自を怪しんでいた。あまりにも、過去の情報が無さすぎる。また、ガス事件やストーカー事件など不審な点が多すぎる。弟の隆治にその事を聞くが、怒らしてしまう。 美冬は、逆に頼江が自分を探ろうとしていることから、雅也に彼女を尾行させ、頼江の弱みを探らせようとする。 雅也は頼江を探る過程で彼女に気づかれてしまい、頼江が詐欺に掛かるのを防いだという体で彼女の信頼を得ることに成功する。美冬は今度は雅也に頼江を抱くように要求する。雅也は、美冬の過去を探るための京都旅行に頼江から誘われるが、それを美冬には黙っておく。また、この章で再び、雅也と有子は再び距離を近くする。 第9章 加藤は大阪出張にかこつけて、過去の新海の知人を訪ねる。しかし格別な手がかりは得られない。 雅也と頼江は京都旅行に行く。そこで美冬の出身地の小学校近辺を訪ね周り、当時の美冬の教師に出会い、美冬の写真を見せてもらう。今の美冬とは全くの別人であった。また雅也は刑事の加藤がその教師を訪ねてきていた事を知る。 刑事の加藤は、美冬が別人と入れ替わった存在であることや、それが震災のドタバタ時であったこと、真相に気づく可能性のあった曽我を始末したことなどを見抜く。 過去の美冬と別人であることを知ったこと、頼江と京都旅行に行った件を雅也は美冬には隠しておく。その代わり、美冬を守る決意を固め、頼江を抱く。 第10章 刑事の加藤は青江新一郎が美冬の手先の器用な共犯者ではないかと調べに行くが、そうではないと確信する。また、頼江のもとにも情報収集に訪れる。加藤は雅也のつくった陶芸作品の美麗さから、雅也の存在に気づく。 雅也は美冬に、頼江を妊娠させるように要求される。また、刑事の加藤を殺るように暗に要求される。雅也は美冬に裏切るなよと言う。 頼江と交際を進めていく雅也。ある日、頼江から華屋に美冬の口利きで曽我の妻が働いていることを知る。曽我は、雅也を脅迫していた立場ではないか。頼江と華屋に行き、曽我の妻に質問を行う。 そして、曽我が脅迫者などではなく、新海美冬とその両親の写った写真を送ろとしていただけの人物であることを知る。雅也は美冬に騙されていた。そのために雅也は曽我をも殺し、死体の後始末まで行った。 「美冬、おまえは俺を殺したぞ。俺の魂を殺したぞーー。」 第11章 加藤と雅也はそれそれの経路から、事件の真相に探りをいれていく。 加藤は頼江から水原雅也について詳しく聴き出す。陶芸教室から彼の住所に向かい、彼のアパートから宝石の図面を発見する。また、アパートの前で有子に出会い、彼の以前の勤め先のフクタ工業について聴き出す。フクタ工業に出向き、社長のフクタから彼の技術力、採用の経緯、ヤスウラの事件、ヤスウラの住所を聞く。また2ヶ月前に水原が再びここを訪れていたこと、図面を買ったことを聞く。 雅也はあやしい男と隅田川のほとりでなんらかの取引をしていた。そして本物の新海美冬の過去を探ることに乗り出す。 インターネットで知り合った女性から、彼女がスカーレット・オハラが好きであったこと、彼女がWDCという会社で働いていたことを知る。 WDCという会社に赴く雅也。そこでは南青山のブティック、ホワイトナイトで美冬が働いていたこと、彼女のかつての住所が幡ヶ谷2丁目であることを知る。今度は幡ヶ谷2丁目に行く雅也。そこで美冬のかつての隣人から、曽我もその住所を訪れていたこと、美冬がかつての会社の社長をスカーレットのように慕っていたことを知る。 加藤は安浦の元を訪れる。安浦はフクタ工業について知っていることを話す。雅也が再びフクタ工業を訪れた際、機械を動かしてなにかを作っていたらしく、その件で福田を加藤は再び問い詰める。 第12章 美冬は整形して、人形のような美しさを手に入れていた。加藤は別ルートから、おそらく雅也が銃を作り、弾丸も仕入れていることを突き詰める。雅也は再び頼江に会い、頼江から華屋が2000年になる年越しの日に、船上パーティを開催することを突き止める。 刑事の加藤も、曽我の妻と親しい華屋の社員から船上パーティが開催されることを聞く。またその際、曽我がかつての新海美冬の上司である女性と会っていたこと、それが曽我の既知の女性であったことを聞かされる。加藤は本当の美冬による曽我殺害の理由に気づく。偽物の本当の名前を知っている曽我は殺さないといけない。 加藤はホテルを出ようとする美冬に、雅也が命を狙っていることを知らせ、美冬の正体を問い詰めるがはぐらかされる。また顔が変わっている理由は、整形しているからだと言われる。整形を重ねた理由は、かつて憧れていた女性に似せようとしているからだと。 加藤は乗船しようとする美冬と秋村を見張る。 そこに雅也が現れ、美冬に近づこうとする。加藤は阻止しようとする。「お前の恨みは俺が晴らす」と。雅也は銃を渡す振りをして加藤に近づく。そして「俺の彼女だけの世界に入ってくるな」と言い 引き金を引く。銃が暴発して、加藤と雅也は死ぬ。 船上の人となった美冬。寒いから船内に入ろうと秋村に言われる。「こんなに素晴らしい夜は初めて。幻みたい。」と言って美冬は妖しく微笑む。
薄雪さんの感想・評価
東野圭吾の名作『白夜行』の続編として銘を打たれた作品です。 1995年、水原雅也は父の葬儀を執り行っていた。通夜の夜を阪神淡路大震災が襲う。父の借金の返済を催促する叔父の俊郎を、雅也は震災の混乱に乗じて殺してしまい、そこを新海美冬に目撃されてしまう。雅也は美冬に黙認され、東京行きを誘われる。そして、2人は行動を共にすることになる。それは雅也にとっては地獄にも通じる旅の始まりだった…。 作品を通じて、白夜行に出てきた登場人物が、同じ氏名で出てくることはありません。読み進める過程で、読者は大きな謎を提示されます。それは新海美冬とは誰なのか?彼女の目的とはなんなのか、と言うミステリーです。作品では明示的には書かれていません。 黒子の位置、刑事の笹垣を思い出しているような言及があること、ハーモニーのケーキの話をするなど、『白夜行』の唐澤雪穂であることは容易に推測されるます。また、もし美冬が雪穂であるとするならは、作品内の辻褄が合ってきます。雪穂のブティックがバブルが弾けたために潰れ、彼女は借金を背負ったのではないか。そのため美冬に入れ済ましたり、美に傾倒するふりをして整形する必要があったのではないか、と。 それでも謎は残ります。 どうして美冬はここまで雅也に冷たくなってしまったのか。そして、本当に雅也に対して気持ちはなかったのか、桐原亮司に雅也を重ねることはなかったのか、など…。東野圭吾曰く、『幻夜』は白夜行3部作の2作目にあたるようなので、最終巻を待たないといけないのでしょう。 美冬の冷酷さがこの作品『幻夜』を彩っていますが、『白夜行』から続く作品の重苦しいトーンは健在で、そしてなぜか心を惹きつけて止まない物悲しさがあります。 東野圭吾の人気作品ランキングで上位にくることは無さそうですか、私はやっぱり傑作だと思います。
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