薄雪パイロットフィッシュ
パイロットフィッシュ

パイロットフィッシュ

大崎 善生/鈴木成一デザイン室

KADOKAWA

2004年03月25日頃

概要

かつての恋人から19年ぶりにかかってきた一本の電話。アダルト雑誌の編集長を務める山崎がこれまでに出会い、印象的な言葉を残して去っていった人々を追想しながら、優しさの限りない力を描いた青春小説。

ステータス

読んだ

メモ

パイロットフィッシュ 「人は一度巡り合った人と二度と別れることはできない。なぜなら人気には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶と共に現在を生きているからである」という文書から、この本は始まります。 アダルト雑誌の編集者をしている主人公山崎のもとに、大学時代の彼女である由希子から真夜中に電話がかかってくる。声だけで誰かを理解する主人公。電話の話の中でパイロットフィッシュの話を由希子にする。パイロットフィッシュとは、水槽の環境づくりのために一番最初に水槽に入れる魚のこと…

パイロットフィッシュ 「人は一度巡り合った人と二度と別れることはできない。なぜなら人気には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶と共に現在を生きているからである」という文書から、この本は始まります。 アダルト雑誌の編集者をしている主人公山崎のもとに、大学時代の彼女である由希子から真夜中に電話がかかってくる。声だけで誰かを理解する主人公。電話の話の中でパイロットフィッシュの話を由希子にする。パイロットフィッシュとは、水槽の環境づくりのために一番最初に水槽に入れる魚のこと。 由希子は、かつて山崎が就職で苦労していた頃に、編集者として勤める文人出版を探してきた女性であった。また、大学に馴染めず、アパートの一室で沈んでいた山崎を救い出した女性でもあった。 由希子と山崎は大学生時代に同じバイトで働くなど、本当に仲が良かった。バイト先のロック喫茶の店長である渡辺は、妻の聡子、娘の冬花・秋菜と家族ぐるみで付き合ってくれるなど、2人を目にかけてくれていた。しかし、渡辺はその後大韓航空機のソ連による撃墜事故で死んでしまう。山崎は、そショックを受けた由希子の友人の伊都子に誘われるままに彼女と寝てしまう。結局それが契機となり、山崎と由希子は別れてしまう。 その後、文人出版で20年働いてきた山崎。世話になった編集長の沢井は肺癌から亡くなる。働いている中で、山崎は「新宿風俗嬢ストーリー」という企画を立ち上げていた。その企画夜中で、可奈とい20歳の風俗嬢と出会い、記事にする。また注目を浴びすぎた可奈をアパートに引き取り、世話をしてあげる。可奈は出ていった後で友人の七海に手紙を託す。奇縁から山崎は七海と付き合うことになる。また、手紙の中で、可奈は以前知り合った渡辺の娘、冬花・秋菜のいずれかであることがわかる。 話の終盤で山崎は由希子とプリクラを撮ることになる。娘の綾子を連れてくる由希子。プリクラを撮るだけではなく、パイロットフィッシュを綾子に買ってあげることになる山崎。由希子と山崎は久々に共にビールを飲むことにする。由希子は旦那が愛人を連れて出て行ったことを告げる。またやけになって行き連れの男性と寝ようとするが、それが文人出版の編集者の五十嵐であることがわかり、白けてしまい、その気がなくなる。今でも山崎に守られている気がすると告げる由希子。 一度道を選んでしまうと、自分は戻れなくなってしまうんだと告げる由希子。また自分たち2人の環境を必死に作ろうとしてくれていたパイロットフィッシュが渡辺だったという。 由希子や渡辺家と暮らしていた時間、アクアリウムのように青く鮮明な時間は心の奥に放りこまれているんだという山崎。まるでバイカル湖みたいに。 別れの間際に、由希子は旦那を奪っているのが伊都子だと山崎に告げる。山崎は思う。人生は、誰がが作った水槽という生態系を作り直すかのように、容易にはやり直せないのだという。さようなら、由希子と。でもね、これからも僕は君といる。それが僕たちが巡りあい、共に時間を過ごした本当の意味なんだという。 だが同じ時間を再び共にもう過ごせない。そう思った瞬間、尻尾のちぎれた犬が自分の尻尾を追いかけるように回り続ける残存が浮かんできた。 個人的にはとても難しくて、残酷な結末の本だな、と思いました。一度巡りあった人とは二度と別れられない。時として、バイカル湖のように、心の深いところから記憶が湧いてくることがある。それが懐かしい記憶であったり、心の支えだったりすることもある。場合によっては、パイロットフィッシュのように誰かが環境を支えてくれていたことに気づくこともある。 でも、時として誰かが作り出した生態系から逃げ出せず苦しむこともある。由希子のように。 人は巡りあった人と二度と別れることはできない。そう尻尾とちぎれた犬が尻尾を追いかけるように、いつまでも同じところを回り続けているのかもしれない。 どうしても、人は同じ過ちをしたり、過去の辛い記憶や人間関係から抜け出せないことがある。 そのことをこの小説は想起させます。

薄雪さんの感想・評価

パイロットフィッシュ 「人は一度巡り合った人と二度と別れることはできない。なぜなら人気には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶と共に現在を生きているからである」という文書から、この本は始まります。 アダルト雑誌の編集者をしている主人公山崎のもとに、真夜中に電話がかかってくる。声だけで誰かを理解する主人公。それは大学時代の彼女である由希子だった。 由希子は、かつて山崎が就職で苦労していた頃に、編集者として勤める文人出版を探してきた女性であった。また、大学に馴染めず、アパートの一室で沈んでいた山崎を救い出した女性でもあった。 電話の話の中でパイロットフィッシュの話を由希子にする山崎。パイロットフィッシュとは、水槽の環境づくりのために一番最初に水槽に入れる魚のこと。 由希子と電話から、かつての自分を想起し、いろいろなことを思い出す山崎。 2人はプリクラを取るために新宿駅南口で待ち合わせをすることになる…。 個人的にはとても難しくて、残酷な結末の本だな、と思いました。一度巡りあった人とは二度と別れられない。時として、バイカル湖のように、心の深いところから記憶が湧いてくることがある。それが懐かしい記憶であったり、心の支えだったりすることもある。場合によっては、パイロットフィッシュのように誰かが環境を支えてくれていたことに気づくこともある。 でも、時として誰かが作り出した生態系から逃げ出せず苦しむこともある。由希子のように。 人は巡りあった人と二度と別れることはできない。そう尻尾とちぎれた犬が尻尾を追いかけるように、いつまでも同じところを回り続けているのかもしれない。 どうしても、人は同じ過ちをしたり、過去の辛い記憶や人間関係から抜け出せないことがある。 そのことをこの小説は想起させます。

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