miサド侯爵夫人
サド侯爵夫人

サド侯爵夫人

青島広志/三島由紀夫

全音楽譜出版社

2017年11月

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登場人物たちの美と思想が火花を散らす、静かな台詞劇。 冒頭から自由と快楽の象徴のようなサン・フォン伯爵夫人と、彼女に翻弄されるシミアーヌが可愛く、惹き込まれた。 ルネとモントルイユ夫人の“サドをどう受け止めるか”という議論は、道徳の名のもとに「悪」を切り捨てようとする人間の傲慢さや、世界を「善と悪」「清楚と堕落」といった型に当てはめて理解しようとする醜悪な本能のようなものが滲んでいて、とても興味深かった。 フランス革命によって社会の価値観が逆転し、かつて完全悪とされたサドが「正義側」になってしまう構造も皮肉でおもしろい。 獄中で小説を書くサドは、現実のルネを“キャラクター”として物語の中に消費していく。その中に「貞淑に」尽くしてきたルネが取り込まれていく様子には、人間が創作に対して無力になっていく怖さがあり、それと同時に、文章の世界が現実を凌駕するような力強さ、美しさも感じた。 だからこそ、三島由紀夫がこの作品を“書いた”こと自体にも深く感動する。 ラストで登場するサドは、もはや「金髪の無邪気な少年」ではなく、ただのヨボヨボの物乞い。長年待ち続けたルネにあっさり追い返される展開も皮肉で痛烈。 サン・フォン夫人の死もショックだったけど、貴族の老女であるはずの彼女が民衆の少女と見間違えられるという描写はすごく芸術的だった。 “人を何者かに定義しようとすること”の危うさと、“定義できないものを生きる人間”の美しさが浮かび上がる、静かだけど強烈な作品だった。

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