まち苦役列車
苦役列車

苦役列車

西村 賢太

新潮社

2012年04月

概要

劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日はーー。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。解説・石原慎太郎。

ステータス

読んだ

メモ

まず、私があまり普段読まない感じの小説だった。だけれど、惹きつけられるものがあり吸い込まれるように読んでいた。自分自身、この小説を好きかと聞かれれば多分あまり好きではないと思う。でも、共感する部分や読んでいられないくらいの情けない部分がむしろなんだか新鮮で面白かった。「陰性の者に対してもかような印象を抱かしめる特技を持っている」の部分が、わかると思った。自分がこの人と話していると心地いいと感じている場面にそれは相手が起因しているものであると感じることが私にもあった。だけど今思…

まず、私があまり普段読まない感じの小説だった。だけれど、惹きつけられるものがあり吸い込まれるように読んでいた。自分自身、この小説を好きかと聞かれれば多分あまり好きではないと思う。でも、共感する部分や読んでいられないくらいの情けない部分がむしろなんだか新鮮で面白かった。「陰性の者に対してもかような印象を抱かしめる特技を持っている」の部分が、わかると思った。自分がこの人と話していると心地いいと感じている場面にそれは相手が起因しているものであると感じることが私にもあった。だけど今思えばあくまで私の中の人間関係の話ではあるかもしれないが、相性も結構あるんだろうなと考えていた。 主人公が社員食堂に移り優越感にどっぷり浸る場面で、とても共感した。 思えば私も人を見下す節があり、その性質のせいで後にその立場に自分が戻った時にどうしようもなく虚しくさせるのだろうなと考えた。 家賃が払えなくなり、退居を差し迫られる時に日下部に頼むシーンがある。 このシーンにとても身に覚えがあり、考えてみたけど私と家族との関係だった。どうしようもなくなると不仲の家族に頼ってしまう私を見ているようでなんとも言えない複雑な気持ちになった。 それと同時に、相手に甘えきって関係がどんどん壊れていく感じ、味わったことがある感じがした。自分の中でいつか関係が壊れてしまうと感じながらに、どんどんいけ行け精神で突き進んでしまうこの切迫感。自分にはこの人しかいないという世界の狭さが痛いほど分かる気がした。同僚が職場で事故に遭い、仕事を退職する場面。私は仕事でこういう事故を目の当たりするのが嫌だし、その後はずっと不安で、仕事をやめる1つのきっかけにもなったことがある。主人公自身も、仕事をやめるまではいかないがそれを聞き免許を辞退する場面がなんとなく共感できた。その最中、どんどん日下部が自分より出世していく場面を読んでいて生々しいと思った。自分よりも後から入ってきた人が出世したことはまだ私に経験はないけど、私よりも職場の人に気に入られたりすることが無性に許せなくてそれも仕事をやめるきっかけのひとつになったことがあった。日下部の彼女に友人を紹介して貰えばいいと思い立つシーンでは、この自分の立場をわきまえない部分も自分に身に覚えがある気がした。本人は考えたくもないだろうけど、その現実を突きつけられる時が来る。そういう現実に打ちのめされる時には酷く今までの人生を否定し自分のことが醜く感じる。生きてる中で最も最悪な感情だと思う。そして、自分の期待が叶わず叩き落とされた時のその人に対するイメージの下落っぷりがすごく共感できる。 そのイメージのまま相手を見つめた時に、この全てをぶち壊してしまいたいけど相手との今までの関係思い直し思いとどまる感じがすごいリアル。ぶち壊すの度合いは違えど心理はよく分かる気がした。主人公が歳をとってからの、身体描写がキツかった。いずれ自分の身にも降りかかるであろう歳をとってからという将来に絶望した。ただでさえ今身体的な痛みが辛いのに、加齢によってプラスでのしかかられると思うとすごく嫌な気持ちになった。だけど主人公の、目も当てられないような感じはもうあまり感じなくなっていた。むしろどこか解放感があるように思えた。 主人公の若い頃の夢だった小説家。推理作家とは違う路線だけどなんだかんだ自分なりの生き方見つけている主人公に少し希望を見た。小遣い稼ぎでも。 結局、川端賞に落選した終わり方はあっさりしているようにも思えたけど余計にリアルさを感じさせたラストでもあった。

まちさんの感想・評価

ネタバレ注意 まず、私があまり普段読まない感じの小説だった。だけれど、惹きつけられるものがあり吸い込まれるように読んでいた。自分自身、この小説を好きかと聞かれれば多分あまり好きではないと思う。でも、共感する部分や読んでいられないくらいの情けない部分がむしろなんだか新鮮で面白かった。「陰性の者に対してもかような印象を抱かしめる特技を持っている」の部分が、わかると思った。自分がこの人と話していると心地いいと感じている場面にそれは相手が起因しているものであると感じることが私にもあった。だけど今思えばあくまで私の中の人間関係の話ではあるかもしれないが、相性も結構あるんだろうなと考えていた。 主人公が社員食堂に移り優越感にどっぷり浸る場面で、とても共感した。 思えば私も人を見下す節があり、その性質のせいで後にその立場に自分が戻った時にどうしようもなく虚しくさせるのだろうなと考えた。 家賃が払えなくなり、退居を差し迫られる時に日下部に頼むシーンがある。 このシーンにとても身に覚えがあり、考えてみたけど私と家族との関係だった。どうしようもなくなると不仲の家族に頼ってしまう私を見ているようでなんとも言えない複雑な気持ちになった。 それと同時に、相手に甘えきって関係がどんどん壊れていく感じ、味わったことがある感じがした。自分の中でいつか関係が壊れてしまうと感じながらに、どんどんいけ行け精神で突き進んでしまうこの切迫感。自分にはこの人しかいないという世界の狭さが痛いほど分かる気がした。同僚が職場で事故に遭い、仕事を退職する場面。私は仕事でこういう事故を目の当たりするのが嫌だし、その後はずっと不安で、仕事をやめる1つのきっかけにもなったことがある。主人公自身も、仕事をやめるまではいかないがそれを聞き免許を辞退する場面がなんとなく共感できた。その最中、どんどん日下部が自分より出世していく場面を読んでいて生々しいと思った。自分よりも後から入ってきた人が出世したことはまだ私に経験はないけど、私よりも職場の人に気に入られたりすることが無性に許せなくてそれも仕事をやめるきっかけのひとつになったことがあった。日下部の彼女に友人を紹介して貰えばいいと思い立つシーンでは、この自分の立場をわきまえない部分も自分に身に覚えがある気がした。本人は考えたくもないだろうけど、その現実を突きつけられる時が来る。そういう現実に打ちのめされる時には酷く今までの人生を否定し自分のことが醜く感じる。生きてる中で最も最悪な感情だと思う。そして、自分の期待が叶わず叩き落とされた時のその人に対するイメージの下落っぷりがすごく共感できる。 そのイメージのまま相手を見つめた時に、この全てをぶち壊してしまいたいけど相手との今までの関係思い直し思いとどまる感じがすごいリアル。ぶち壊すの度合いは違えど心理はよく分かる気がした。主人公が歳をとってからの、身体描写がキツかった。いずれ自分の身にも降りかかるであろう歳をとってからという将来に絶望した。ただでさえ今身体的な痛みが辛いのに、加齢によってプラスでのしかかられると思うとすごく嫌な気持ちになった。だけど主人公の、目も当てられないような感じはもうあまり感じなくなっていた。むしろどこか解放感があるように思えた。 主人公の若い頃の夢だった小説家。推理作家とは違う路線だけどなんだかんだ自分なりの生き方見つけている主人公に少し希望を見た。小遣い稼ぎでも。 結局、川端賞に落選した終わり方はあっさりしているようにも思えたけど余計にリアルさを感じさせたラストでもあった。

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